冷蔵・冷凍倉庫の温度監視システム比較|データロガーとIoT監視の選び方

冷蔵・冷凍倉庫では、庫内温度を表示するだけでなく、温度逸脱を早期に検知し、原因確認と記録保存まで行える仕組みが必要です。

厚生労働省の「冷凍・冷蔵商品販売事業者向け手引書」では、商品の規格に適合した庫内温度の管理と、衛生管理の実施記録が示されています。また、農林水産省の定温管理に関する技術的基準では、施設温度の記録、異常時の措置、記録の保存などが定められています。実際の管理温度と保存期間は、対象商品、法令、取引先基準、HACCP計画に基づいて決めてください。厚生労働省「冷凍・冷蔵商品販売事業者向け手引書」/ 農林水産省「定温管理流通加工食品についての流通行程管理者の認定の技術的基準」

冷蔵・冷凍倉庫の温度をIoTで遠隔監視する作業者

冷蔵・冷凍倉庫の温度をクラウドで監視し、保管環境の異常を早期に把握するイメージ

要点

  • 冷蔵・冷凍倉庫では、製品の保管条件に合う測定範囲と精度を選ぶ
  • ロガー本体を低温庫内に置けるか、外部プローブだけを庫内へ入れるかを確認する
  • センサーは冷却器の吹出口や扉の直近を避け、保管品を代表する位置に設置する
  • 庫内の上下、奥行き、出入口付近で温度差を事前に調査する
  • 高温・低温だけでなく、通信断、停電、電池残量も通知対象にする
  • 記録専用ロガーとクラウド型IoT監視は、運用目的に応じて選ぶ

1.データロガーとIoT監視の違い

データロガーは一定間隔で温度を記録し、後からPCやスマートフォンへ取り出して確認する機器です。小規模な冷蔵庫の記録や、監査用データの保存に向いています。

IoT監視システムは、測定値をネットワーク経由でクラウドへ送信し、ブラウザやアプリから遠隔確認できます。設定値を外れた際にメールやプッシュ通知を送れるため、夜間や休日の異常把握に適しています。

比較項目 記録中心のデータロガー クラウド型IoT監視
主な目的 温度履歴の保存・回収 遠隔監視・異常通知・履歴保存
データ確認 現場回収、USB、Bluetoothなど Web、アプリ、メールなど
異常への対応 次回確認時に判明する場合がある 通信が有効なら早期通知が可能
導入のしやすさ 単体で始めやすい Wi-Fi、携帯通信、ゲートウェイなどを確認
適した用途 小規模設備、輸送、監査記録 複数庫、多拠点、夜間監視

どちらか一方が常に優れているわけではありません。遠隔通知が必要ならIoT型、ネットワークから独立した記録が最優先なら単体ロガー、重要設備では両方を組み合わせる方法もあります。

2.冷蔵・冷凍倉庫向けセンサーの選び方

必要な温度範囲を確認する

冷蔵庫、冷凍庫、超低温設備では必要な測定範囲が異なります。通常運転時だけでなく、霜取り運転、扉開放、設備停止時に生じる温度も含めて選定します。

「測定できる範囲」と「精度が保証される範囲」は同じとは限りません。特に低温域では、仕様表に記載された温度帯ごとの精度を確認してください。

本体と外部プローブを分けて考える

冷凍庫内の外部温度プローブと庫外に設置したデータロガー

ガー本体を庫外へ設置し、対応する外部温度プローブだけを冷凍庫内へ入れる構成例です。

冷凍倉庫では、センサー本体の動作温度が庫内温度に対応していない場合があります。この場合、本体を庫外へ置き、ケーブル付き外部プローブだけを庫内へ設置する構成が有効です。

外部プローブを選ぶ際は、次の項目を確認します。

  • 測定範囲と低温域の精度
  • ケーブル長と延長可否
  • プローブとケーブルの防水性能
  • 扉パッキンを傷めない配線方法
  • 結露水がコネクターへ流れないドリップループ
  • 校正、交換、予備品の入手方法

低温時の電池と通信を確認する

低温環境では電池性能が低下し、交換周期が短くなることがあります。また、断熱パネル、金属扉、保管品、棚はWi-Fiや無線通信を減衰させます。

導入前に、扉を閉め、商品を保管した通常状態で通信試験を行ってください。可能であれば、本体やゲートウェイを庫外に設置し、庫内には外部プローブだけを入れると、電池交換と通信確認がしやすくなります。

3.温度センサーの設置位置

センサーは「最も設置しやすい壁」ではなく、実際の保管品が置かれる空気環境を代表する位置に設置します。

冷蔵倉庫の入口・中央・奥側と高さ別の温度センサー設置位置

代表測定点は庫内の中央・奥側と保管品の高さに配置し、扉付近は変動を確認するリスク監視点として分けます。

代表測定点として避けたい場所は次のとおりです。

  • 冷却器や送風口の直下
  • 扉や搬入口のすぐ近く
  • 壁、天井、冷却配管への密着
  • 霜取りヒーターの近く
  • パレットや荷物で完全に囲まれる場所
  • 清掃水や結露水が直接かかる場所

大型倉庫では、入口側・中央・奥側、上段・中段・下段などに仮設ロガーを配置し、通常運転、入出庫、霜取り、繁忙時間帯を含めて温度分布を確認します。その結果から常設点を決め、扉付近など変動の大きい場所は「リスク監視点」として分けて管理すると原因を判断しやすくなります。

冷蔵倉庫の冷却器と搬入口周辺に生じる温度分布

入出庫口や冷却器周辺では局所的な温度差が生じるため、仮設ロガーで分布を確認して常設位置を決めます。

4.異常通知と記録を運用につなげる

アラート値は、インターネット上の一般値をそのまま使わず、商品の表示条件、社内基準、HACCP計画、取引先との合意に基づいて設定します。

設定しておきたい主な通知は次のとおりです。

冷蔵倉庫の温度異常と通信障害をスマートフォンへ通知

高温・低温、通信断、電池残量低下、扉開放などを担当者へ通知し、対応手順につなげます。

  • 高温・低温アラート
  • 一定時間継続した温度逸脱
  • センサーまたはゲートウェイのオフライン
  • 電池残量低下
  • 停電または外部電源断
  • 必要に応じて扉開放、漏水、機器運転状態

短い扉開放のたびに通知すると、重要な警報が埋もれます。一方、遅延時間を長くしすぎると設備故障の発見が遅れます。注意報と緊急警報を分け、一次対応者、夜間連絡先、商品の移動先、記録方法まで手順化してください。

通信障害中にも測定を続けるには、本体側のローカル記録が重要です。ただし、保存できることと、異常をリアルタイム通知できることは別です。停電中も通知が必要なら、センサーだけでなくルーター、ゲートウェイ、通信回線を含めてバックアップ電源を検討します。

冷蔵倉庫監視で通信障害中にローカル記録し復旧後に再送する構成

通信障害中は現場側で測定データを保持し、回線復旧後にクラウドへ補完できる構成が有効です。

5.日本市場で選べる温度監視システム比較

以下はランキングではありません。クラウド型、ネットワークロガー型、PC集中監視型という異なる構成を、冷蔵・冷凍倉庫での運用から比較しています。

比較項目 UbiBot WS1 Pro+外部温度プローブ T&D TR-71nw+対応温度センサー チノー MD8000
基本構成 Wi-Fi/モデルにより4G対応IoTセンサー 温度2chネットワークデータロガー 無線送信器+USB受信器+PC
低温測定の例 DS18B20プローブ:-55~125℃ オプションセンサー使用時:最大-60~155℃ 外付けサーミスタ:-40~80℃、熱電対・Pt100モデルも選択可
記録容量 本体最大300,000件 8,000件×2ch 16,000件/チャンネル
遠隔確認 UbiBotクラウド、アプリ、Web、API おんどとり Web Storage、アプリ、ブラウザ PCアプリケーションを中心に構成
通知 アプリ、メールなど。モデル・契約条件を確認 Eメール、Push通知、アプリ、ブラウザ Eメール、接点出力など
通信 2.4GHz Wi-Fi、モデルにより4G 有線LAN、USB 429MHz帯無線、受信器はUSB接続
特徴が生きる用途 素早い導入、スマホ監視、API連携、外部プローブによる冷凍庫監視 有線LANを使った安定運用、2点測定、国内ロガー体系と校正を重視 多点・多種類入力をPCで集中管理し、接点警報も使いたい設備
導入時の注意 本体は非防水。庫内条件に応じて本体を庫外へ設置 本体は非防水。使用センサーと電源条件を確認 常時監視には受信器とPCを含むシステム設計が必要

UbiBot WS1 Pro

UbiBot WS1 Proは、温度・湿度・照度を測定し、Wi-Fiまたはモデルにより4Gでクラウドへ送信できるIoTセンサーです。日本公式ページでは、本体に最大300,000件の記録を保存でき、アプリやメールによる通知、API、外部温度プローブに対応すると案内されています。UbiBot WS1 Pro公式製品情報

Micro USB接続のDS18B20外部温度プローブは、測定範囲-55~125℃、-10~85℃における精度±0.5℃、ケーブル長3mまたは5mです。本体を庫外へ置き、プローブだけを冷蔵庫・冷凍庫へ入れる構成に向いています。UbiBot DS18B20外部温度プローブ公式製品情報

スマートフォンから複数拠点を確認したい、現場に常時PCを置きたくない、APIで社内システムへ連携したい場合は、UbiBotを検討しやすいでしょう。購入前には、Wi-Fiの到達性、4Gモデルの対応条件、外部プローブとの互換性、クラウド保存条件を確認してください。

T&D TR-71nw

T&D TR-71nwは、2チャンネルの温度測定に対応する有線LAN型データロガーです。標準範囲は-40~110℃で、対応するオプションセンサーを使用すると最大-60~155℃まで測定できます。8,000件×2チャンネルを記録し、メール、Push通知、アプリ、ブラウザで警報を確認できます。T&D TR-71nw公式製品情報

既設の有線LANを利用したい場合、1台で2点を測定したい場合、国内のデータロガー体系や校正サービスを重視する場合に適した選択肢です。

チノー MD8000

チノーMD8000は、最大60台の送信器をPCで一元管理できる無線ロガーです。外付けサーミスタ、熱電対、測温抵抗体など複数の入力モデルがあり、送信器には16,000データ/チャンネルの内部メモリがあります。Eメール通報と接点出力にも対応します。チノーMD8000公式製品情報

多数の測定点をPCで集中監視したい設備や、警報接点を既存設備へ接続したい場合に向いています。クラウド中心の運用とは構成が異なるため、PC、受信器、電源、保守方法まで含めて比較してください。

6.用途別の選び方

導入目的 選び方の目安
家庭用・店舗用冷蔵庫を遠隔監視したい 外部プローブ対応のWi-Fi型IoTセンサー
小規模倉庫で記録を残したい 単体ロガーまたはネットワークロガー
複数の冷蔵庫・冷凍庫をスマホで確認したい クラウドで機器を一元管理できる構成
1台で庫内2点を測定したい 2チャンネル入力ロガー
大型倉庫を多点監視したい 無線送信器+受信器、またはゲートウェイ型構成
超低温域を測定したい 対応する熱電対・Pt100・専用プローブを選択
監査や品質保証を重視したい 校正、CSV/PDF出力、権限管理、記録保存期間を確認

7.導入前チェックリスト

保管商品の管理温度と許容逸脱時間を決めた

通常時と設備停止時を含む測定範囲を確認した

本体と外部プローブの動作温度を分けて確認した

庫内の温度分布を仮設ロガーで調査した

扉を閉め、商品を入れた状態で通信試験を行った

高温・低温、オフライン、電池低下の通知を設定した

通信断中の記録と復旧後のデータ補完を試験した

停電時の連絡方法と商品移動手順を決めた

校正または精度確認の周期を決めた

クラウド料金、保存期間、CSV・API出力を確認した

よくある質問

冷凍庫では本体も庫内に入れますか

本体の動作温度が庫内温度に対応しない場合は、外部プローブだけを庫内へ入れ、本体を庫外へ設置します。低温時の電池性能や結露、通信状態も考慮してください。

センサーは扉の近くに置けばよいですか

扉付近は開閉の影響を受けやすいため、倉庫全体を代表する唯一の測定点には適しません。代表測定点と、扉付近のリスク監視点を分ける方法が有効です。

温度アラートは何℃に設定すべきですか

商品表示、法令、HACCP計画、取引先基準に基づいて設定します。瞬間的な変化と継続的な逸脱を区別するため、必要に応じて遅延時間や段階警報を設定してください。

Wi-Fiが切れた場合も記録できますか

ローカル記録対応機器なら、通信停止中も測定値を保存できます。ただし、その間はクラウド通知が届かない場合があります。復旧後の自動補完を導入時に試験してください。

冷蔵倉庫では湿度も測定すべきですか

結露、乾燥、包装への影響を管理する場合は湿度測定も有効です。ただし、低温・高湿度・結露環境では湿度センサーの使用条件と復帰特性を確認してください。

まとめ

冷蔵・冷凍倉庫の温度監視では、表示精度だけでなく、測定範囲、外部プローブ、設置位置、通信、ローカル記録、異常時の対応手順を一体として設計することが重要です。

UbiBot WS1 Proと外部温度プローブの組み合わせは、本体を庫外に置きながら冷蔵庫・冷凍庫内を測定し、スマートフォンやWebで遠隔確認したい場合に導入しやすい構成です。クラウド通知、API、多拠点管理を活用したい事業者にも適しています。

一方、T&Dは有線LAN型ロガーと国内の校正・ソフトウェア体系を重視する場合、チノーMD8000は多数の測定点や多様な入力をPC中心で集中監視する場合に有力です。

まずは代表的な1室または1台で試験し、温度分布、通信、通知、停電・復旧動作を確認してから全体へ展開してください。

参考資料

  1. 厚生労働省「冷凍・冷蔵商品販売事業者向け手引書」
  2. 農林水産省「定温管理流通加工食品についての流通行程管理者の認定の技術的基準」
  3. UbiBot WS1 Pro公式製品情報
  4. UbiBot DS18B20外部温度プローブ公式製品情報
  5. T&D TR-71nw公式製品情報
  6. チノーMD8000公式製品情報

※製品仕様、価格、通信方式、クラウド機能、契約条件、国内在庫は変更される場合があります。公開または購入前に各メーカーの最新仕様をご確認ください。

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