クラウド型とオンプレミス型の環境監視を比較|構成・運用・データ管理

クラウドと自社サーバーに接続する温湿度センサー環境監視システムの比較

クラウド型とオンプレミス型の環境監視システムを比較するイメージ

温度・湿度・CO₂などの環境データを継続的に監視するシステムには、大きく分けて「クラウド型」と「オンプレミス型」があります。

クラウド型は導入しやすく、複数拠点をスマートフォンやWebから確認しやすいことが特長です。一方、オンプレミス型は、自社が管理するサーバーやネットワーク内にシステムを構築し、データの保存場所やアクセス方法を組織側で管理できます。

どちらかが常に優れているわけではありません。監視する施設、データの機密性、社内IT体制、インターネット障害への備え、保守予算によって適切な構成は変わります。

要点

  • クラウド型は初期導入と多拠点からの遠隔確認を行いやすい
  • オンプレミス型はデータ保存場所やネットワーク構成を組織側で管理しやすい
  • クラウド型でも、ユーザー管理や端末管理は利用者側の責任となる
  • オンプレミス型では、サーバー保守、更新、バックアップ、障害復旧を自社で設計する
  • 通信障害対策には、センサーやゲートウェイのローカル記録も必要
  • 監視はクラウド、重要処理は施設内で行うハイブリッド構成も選択肢になる
  • UbiBotには通常のクラウドサービスに加え、ローカルサーバーへ導入するオンプレミスプラットフォームが用意されている

1.クラウド型の環境監視とは

クラウド型では、センサーが測定したデータをインターネット経由でサービス事業者のプラットフォームへ送信します。

一般的な構成は次のとおりです。

環境センサー → Wi-Fi・4G・ゲートウェイ → クラウド → Web・アプリ

利用者は自社でサーバーを構築しなくても、ブラウザーやアプリからデータを確認できます。

主なメリット

  • 導入までの期間を短縮しやすい
  • 社外や複数拠点から確認できる
  • サーバー機器を自社で用意する必要がない
  • ユーザー追加や測定点の拡張を行いやすい
  • グラフ、アラート、データ出力を利用しやすい
  • サービス側で更新や機能追加が行われる

主な注意点

  • インターネット接続が必要
  • 利用料金や保存期間を確認する必要がある
  • サービス障害時には遠隔画面を利用できない可能性がある
  • データ保存地域や契約終了時の出力方法を確認する必要がある
  • 仕様変更や保守時間がサービス事業者の運用に影響される
  • ユーザー権限やパスワードは利用者側でも管理する必要がある

IPAはクラウドサービスについて、利用目的、取り扱う情報、サービス事業者の信頼性、データ保存地域、障害時の対応、バックアップなどを確認するよう案内しています。クラウドを利用すれば、利用者側の管理責任がすべてなくなるわけではありません。

2.オンプレミス型の環境監視とは

オンプレミス型では、自社施設または自社が管理する環境にサーバー、データベース、監視ソフトウェアを構築します。

一般的な構成は次のとおりです。

環境センサー → ゲートウェイ → 社内ネットワーク → 自社サーバー

インターネットへ直接データを送らず、閉域ネットワークやイントラネット内で運用する構成も可能です。

主なメリット

  • データの保存場所を自社方針に合わせやすい
  • 社内ネットワーク内で運用できる
  • アクセス制御や外部接続を自社基準で設計できる
  • 既存の社内システムと連携しやすい場合がある
  • 長期的な保存方針を組織側で決められる

主な注意点

  • サーバーとネットワークの初期構築が必要
  • OS、データベース、アプリケーションの更新が必要
  • バックアップと復旧試験を自社で計画する
  • 障害対応を行える担当者または保守契約が必要
  • 外部から閲覧する場合はVPNなどの安全な経路が必要
  • ハードウェア更新や容量増設の費用が発生する

「データを社内に保存すること」と「安全であること」は同じではありません。オンプレミス型でも、アクセス権限、脆弱性対応、ログ管理、バックアップ、災害対策が不十分であれば、情報漏えいやデータ消失のリスクがあります。

3.クラウド型とオンプレミス型の違い

比較項目 クラウド型 オンプレミス型
サーバー サービス事業者が用意 利用組織が用意・管理
初期導入 比較的始めやすい 構築設計と初期投資が必要
遠隔監視 Web・アプリで利用しやすい VPNなどの接続設計が必要
多拠点管理 拡張しやすい 拠点間ネットワークの設計が必要
保守 サービス側と利用者側で分担 組織側の管理範囲が広い
データ保存場所 事業者の条件を確認 自社方針に合わせやすい
カスタマイズ 提供機能の範囲が基本 要件に応じて設計しやすい
インターネット障害 遠隔表示・通知が停止する場合がある 施設内監視を継続できる構成が可能
バックアップ 契約・サービス仕様を確認 自社で設計・試験する
費用 利用料が継続的に発生する場合がある 初期費用と保守・更新費用を考慮
適する例 多拠点、小規模導入、遠隔監視 閉域網、高いデータ管理要件、既存システム連携
環境センサー、ゲートウェイ、クラウド、自社サーバーで構成する3種類の監視方式

クラウド型・オンプレミス型・ハイブリッド型の基本構成

単純な月額料金だけでは適切に比較できません。5年程度の運用を想定し、機器、通信、サーバー、ソフトウェア、保守、バックアップ、人件費を含む総運用コストで比較します。

4.ハイブリッド型という選択肢

ハイブリッド型は、施設内のローカル処理とクラウドサービスを組み合わせる構成です。

例えば、次のような役割分担が考えられます。

  • 設備制御は施設内で継続する
  • 測定履歴はクラウドで長期表示する
  • インターネット障害中は現場にデータを保存する
  • 復旧後に保存データをクラウドへ送信する
  • 複数拠点の概要はクラウドで確認する
  • 詳細な生データは社内サーバーで管理する

ハイブリッド型は両方式の長所を組み合わせられますが、データの正本、時刻同期、再送、重複処理、障害時の動作が複雑になります。

導入前に「どのデータを、どこへ、いつ保存するか」を明確にしてください。

5.通信障害時に起こること

クラウド型とオンプレミス型の違いだけでなく、障害が発生する場所を分けて考える必要があります。

障害箇所 主な影響 必要な対策
センサー 測定値を取得できない センサー異常通知、予備機、点検
センサーからゲートウェイ 測定データが届かない センサー内部記録、再送、電波試験
インターネット回線 クラウドを更新できない ローカル保存、予備回線、復旧後の再送
ローカルサーバー オンプレミス画面や保存が停止 冗長化、バックアップ、復旧手順
電源 測定・通信・保存が停止 UPS、非常電源、停電時手順
通知サービス アラートが届かない 複数通知経路、現場確認手順

ローカル保存機能があっても、停電中に装置が動作しなければ記録は継続できません。また、データが保存されても、通信停止中は遠隔アラートを受信できない場合があります。

6.日本の研究事例:UECSに見るローカル制御とクラウド連携

温室内の環境センサーとローカル制御装置をクラウドへ接続するUECS活用イメージ

施設内の自律分散制御とクラウドによる遠隔監視を組み合わせるイメージ

農研機構が紹介するUECS(ユビキタス環境制御システム)は、日本で開発された施設園芸向けの自律分散型環境制御システムです。

UECSでは、温度・湿度・CO₂などを測定する機器と、換気窓、暖房、かん水などの制御機器をネットワーク上で連携させます。中枢装置へすべてを集中させず、各ノードが役割を分担するため、一部の故障でシステム全体が停止しにくい構成を目指しています。

さらに農研機構は、UECS対応機器をクラウドへ接続するためのマニュアルを公開しています。クラウドの主な役割として、次の機能が説明されています。

  • センサーデータの長期記録
  • グラフによる可視化
  • 遠隔地からの閲覧
  • 異常発生時の通知

この事例は、施設内の制御をローカルネットワークで行いながら、記録・遠隔閲覧・警報にクラウドを利用する構成の参考になります。

UECSはUbiBotを使用した研究ではありません。しかし、「現場の機能をすべてクラウドへ依存させるのではなく、ローカル処理と遠隔サービスの役割を分ける」という考え方は、環境監視システムの設計にも応用できます。

7.環境監視で確認すべきデータ管理項目

どの構成を選ぶ場合でも、次の項目を確認します。

データの保存

  • 保存場所と保存地域
  • 保存期間
  • 保存容量
  • 容量超過時の処理
  • バックアップの頻度
  • 復旧試験の実施方法
  • 契約終了時のデータ出力

データの完全性

  • 測定時刻を保持できるか
  • 時刻同期の方法
  • 欠測を識別できるか
  • 再送データの重複を防げるか
  • 設定変更の履歴を残せるか
  • データをCSVやAPIで出力できるか

アクセス管理

  • ユーザーごとの権限設定
  • 退職・異動時のアカウント停止
  • 多要素認証への対応
  • 操作ログと監査証跡
  • パスワードポリシー
  • 外部委託先のアクセス範囲

研究、医薬品、食品品質管理などで使用する場合は、単にグラフを確認できるだけでなく、元データ、時刻、変更履歴、校正記録との関連付けを確認する必要があります。

8.UbiBotのクラウド型環境監視

UbiBotの一般的な構成では、WS1、WS1 Pro、GS1などのセンサー、またはLoRaセンサーとGW1ゲートウェイを利用して、測定データをUbiBot IoTプラットフォームへ送信します。

主な利用方法は次のとおりです。

  • Webまたはアプリからのデータ確認
  • 温度・湿度などの履歴グラフ
  • 閾値に基づく異常通知
  • 複数機器・複数拠点の管理
  • CSVによるデータ出力
  • APIを利用した外部システム連携
  • センサーまたはゲートウェイの内部記録

クラウド型は、専用サーバーを構築せずに少数の測定点から導入し、必要に応じて測定点を増やしたい場合に適しています。

ただし、センサーの通信方式、内部記録件数、外部プローブ、API、通知方法は製品やプランによって異なります。導入前に対象機器の仕様を確認してください。

9.UbiBotのオンプレミスプラットフォーム

UbiBotは、パブリッククラウドとは別に、UbiBot On-Premises Platform(OPP)を案内しています。

日本向け案内では、UbiBot OPPを顧客のローカルサーバーへ導入し、イントラネット内でデータを管理できると説明されています。Windows、macOS、Linuxに対応する構成が案内され、履歴データや推移を可視化できます。

倉庫と研究施設の環境センサーをクラウドまたはオンプレミスサーバーで管理する構成

複数拠点の環境データをクラウドまたは組織内サーバーで管理する構成イメージ

オンプレミス構成は、次のような要件がある場合に検討できます。

  • 環境データを組織内に保存したい
  • 外部クラウドへの接続を制限している
  • 施設内ネットワークで監視したい
  • 自社の認証・アクセス管理方針へ合わせたい
  • 既存システムとの個別連携を検討したい
  • サーバーとバックアップを管理できるIT体制がある

ただし、OPPは通常のセンサー購入だけで自動的に利用できる機能ではありません。対応機器数、サーバー要件、ライセンス、導入作業、更新、保守、バックアップについて、事前にUbiBotへ相談する必要があります。

また、パブリッククラウドとOPPへ同時に自動保存できるとは限りません。ハイブリッド運用を希望する場合は、データ経路と対応範囲を個別に確認してください。

10.用途別の選び方

導入条件 適した構成の考え方
まず数台から導入したい クラウド型を基本に検討
複数店舗・倉庫をまとめて確認したい クラウド型
社外からスマートフォンで確認したい クラウド型
外部クラウドへのデータ送信を制限している オンプレミス型
自社サーバーと保守担当者がいる オンプレミス型を検討可能
インターネット停止中も施設内で制御したい オンプレミスまたはハイブリッド型
複数拠点の概要と現場制御を分けたい ハイブリッド型
研究・監査用に長期保存したい 保存形式、バックアップ、変更履歴を基準に選定
災害時の事業継続を重視したい 拠点外バックアップを含めて設計

11.導入前チェックリスト

  • 測定データの利用目的を決めた
  • データの保存場所と保存期間を確認した
  • インターネット障害時の動作を確認した
  • センサーとゲートウェイの内部記録を確認した
  • 電源障害に備えたUPSを検討した
  • クラウドの料金と契約終了時の出力条件を確認した
  • オンプレミスのサーバー要件を確認した
  • OS・データベース・アプリケーションの更新担当を決めた
  • バックアップからの復旧試験を計画した
  • ユーザー権限とアカウント管理方法を決めた
  • CSV・APIなど必要なデータ出力に対応している
  • ハイブリッド構成ではデータの正本を決めた

よくある質問

クラウド型とオンプレミス型では、どちらが安全ですか

一律には決められません。クラウド型では事業者の対策と利用者側のアカウント管理、オンプレミス型では自社のサーバー管理、更新、バックアップが重要です。自社の運用能力とセキュリティ要件に基づいて選びます。

オンプレミス型ならインターネットは不要ですか

施設内だけで閲覧・保存する構成では不要な場合があります。ただし、遠隔閲覧、外部通知、ソフトウェア更新、保守などで外部接続が必要になることがあります。

クラウド型は通信障害中のデータを失いますか

製品構成によって異なります。センサーやゲートウェイにローカル記録があり、復旧後の再送に対応していれば、データを補完できる場合があります。導入時に遮断・復旧試験を行ってください。

オンプレミス型は月額料金が不要ですか

必ずしも不要ではありません。ソフトウェアライセンス、保守、更新、バックアップ、サーバー、IT担当者などの費用が発生する可能性があります。

クラウドとオンプレミスを併用できますか

技術的にはハイブリッド構成が可能ですが、製品によって対応範囲が異なります。保存先、同期方法、障害時の動作、重複データの処理を確認してください。

UbiBot製品はオンプレミスで利用できますか

UbiBotはオンプレミスプラットフォームを提供しています。ただし、対応機器、ライセンス、サーバー要件、導入作業は個別確認が必要です。通常のクラウド版と同じ条件で利用できるとは限りません。

まとめ

クラウド型は、短期間で導入し、複数拠点を遠隔監視したい場合に適しています。オンプレミス型は、データ保存場所やネットワーク構成を自社方針に合わせたい組織に向いています。

一方、監視対象が重要設備である場合は、クラウドかオンプレミスかという二者択一だけでなく、センサー側の記録、ゲートウェイ、予備回線、UPS、バックアップ、現場対応まで含めて設計する必要があります。

UbiBotでは、通常のクラウド型環境監視に加え、組織内のサーバーへ導入するオンプレミスプラットフォームも検討できます。

まずは測定点数、拠点数、遠隔閲覧の必要性、データ保存方針、社内IT体制を整理し、自社に適した構成を選んでください。

CTA例:
クラウド型・オンプレミス型のどちらを選ぶべきか迷っていますか?
測定項目、設置台数、拠点数、ネットワーク制限、保存期間を整理したうえで、UbiBot日本窓口へご相談ください。

参考資料

  1. IPA「クラウドとは?今さら聞けないDX関連用語をわかりやすく解説」
  2. IPA「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」
  3. IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
  4. 農研機構「ユビキタス環境制御システム(UECS)技術」
  5. 農研機構「UECS対応型環境制御装置のクラウド接続マニュアル」
  6. UbiBot日本公式 App Center/オンプレミスプラットフォーム
  7. UbiBot On-Premises Platform
  8. UbiBot日本公式「プラットフォーム」

※製品仕様、オンプレミス版の対応機器、ライセンス、サーバー要件、クラウド機能、料金は変更される場合があります。公開または導入前に最新条件をご確認ください。

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