食品工場の温度管理をIoT化するための導入ガイド

食品工場の製造室と冷蔵庫をIoT温度センサーで遠隔監視するイメージ

食品工場におけるIoT温度監視のイメージ

要点

食品工場のIoT温度監視では、センサーを空いている壁面へ設置するだけでは、工程や保管環境を正しく評価できません。

原材料の受け入れから製造、冷却、包装、保管、出荷までの工程を整理し、「どの工程・製品・区域を、どの測定値で管理するのか」を明確にしたうえで測定点を決めることが重要です。

また、製造室や冷蔵庫の環境温度を測るセンサーと、食品の中心温度、加熱温度、冷却時間などを確認する計器では、役割が異なります。環境監視システムはHACCPに基づく衛生管理や記録作成を支援できますが、製品ごとに定められた重要管理点の測定を自動的に代替するものではありません。

日本では、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。事業者は衛生管理計画や必要な手順書を作成し、実施状況を記録・保存するとともに、定期的な検証と見直しを行います。 厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理について」

IoT温度監視を導入する際も、機器の仕様だけでなく、衛生管理計画、工程図、許容限界、逸脱時の対応、記録保存、校正および保守を一体として設計する必要があります。

1.工程フローと衛生管理計画から測定場所を整理する

機種やセンサー台数を決める前に、原材料の受け入れから出荷までの工程フローを確認します。

食品工場の受入から製品保管・出荷までの工程フローと温度監視ポイント

工程ごとに異なる温度測定の目的

主な確認対象は次のとおりです。

  • 原材料の受け入れ場所
  • 常温・冷蔵・冷凍原料の保管場所
  • 解凍室、下処理室、調合室
  • 加熱・殺菌工程
  • 冷却工程
  • 充填・包装工程
  • 高度衛生管理区域
  • 製品の一時保管場所
  • 冷蔵庫・冷凍庫
  • 出荷前保管場所
  • 搬入口、前室、エアカーテン
  • 洗浄・殺菌区域
  • ボイラー、蒸気配管、オーブン、冷凍機などの周辺

そのうえで、各工程について次の点を整理します。

  • 管理対象が室温なのか、食品の中心温度なのか
  • 温度だけでなく湿度も必要か
  • 連続監視が必要か、作業ごとの測定でよいか
  • 設定値を外れた場合に、誰が何を行うか
  • 記録をどのくらいの期間保存するか
  • 校正や精度確認をどのように行うか

厚生労働省は業種別の手引書を公開しています。冷凍食品、食肉製品、そうざい、菓子、乳製品など、対象業種に対応する手引書がある場合は、一般的な温度情報よりも、該当する業種別手引書と自社の衛生管理計画を優先してください。 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」

2.環境温度と食品の中心温度を区別する

食品工場における環境温度センサーと食品中心温度プローブの違い

環境温度と食品中心温度は測定目的が異なる

食品工場では、「温度を測定している」という事実だけでは十分ではありません。何の温度を測っているのかを明確にする必要があります。

環境温度の監視

製造室、包装室、冷蔵庫、冷凍庫などの空気温度を継続的に測定します。

環境温度の記録によって、次のような変化を把握しやすくなります。

  • 空調・冷凍設備の異常
  • 扉の長時間開放
  • 製品搬入による温度上昇
  • デフロスト運転の影響
  • 夜間や休日の設備停止
  • 季節による室温変化
  • 特定区域で繰り返し発生する温度差

製品温度・工程温度の測定

製品の中心温度、加熱温度、冷却時間、殺菌条件などを確認する測定です。工程や製品によっては、HACCPプラン上の重要管理点または重要な管理項目になります。

この場合は、製品へ挿入するプローブ、表面温度計、設備に組み込まれた温度計など、用途に適した計器を使用します。

室内の環境温度が正常でも、食品の中心温度が基準に達しているとは限りません。反対に、扉の開放によって冷蔵庫内の空気温度が一時的に上昇しても、製品温度が直ちに同じ幅で上昇するとは限りません。

したがって、環境温度監視と製品・工程温度測定は、目的を分けたうえで組み合わせることが重要です。

3.製造室・包装室のセンサー位置

製造室や包装室の代表測定点は、作業員や製品が実際に置かれる区域の環境を測定できる位置に設置します。

一般的には床面から1.2~1.7m程度が出発点になりますが、すべての工場に共通する固定基準ではありません。作業台、コンベヤー、製品の高さ、設備配置、空気の流れ、清掃方法を考慮して決定します。

代表測定点として避けたい位置は次のとおりです。

  • 空調吹出口の直下
  • 還気口の直近
  • 蒸気配管や蒸気排出口の近く
  • オーブン、フライヤー、殺菌機などの熱源付近
  • 外壁や日射を受ける壁面
  • 頻繁に開閉する出入口の直近
  • 洗浄水が直接かかる場所
  • 結露水が滴下する場所
  • 金属製パネルに密着する場所
  • 台車、フォークリフト、ホースが接触する場所

空調吹出口や熱源の近くは、設備の動作を確認する「リスク監視点」には適しています。しかし、その値を製造室全体の代表値として使用すると、実際の作業環境と大きく異なる可能性があります。

高い清浄度が求められる区域や加熱後の製品を扱う区域では、温度だけでなく、湿度、結露、差圧、空調運転状態などの確認が必要になることもあります。

粉体原料を扱う区域では、湿度が固結、流動性、包装、清掃性などに影響する場合があります。湿度を測定する場合も、データをどの管理行動に結び付けるのかを事前に決めておきます。

4.冷蔵庫・冷凍庫のセンサー位置

冷蔵庫や冷凍庫の内部は、どこでも同じ温度になるわけではありません。

冷蔵庫と冷凍庫の温度センサー設置位置を示した図

冷蔵庫・冷凍庫における代表測定点とリスク監視点

温度差が生じやすい場所には、次のような位置があります。

  • 蒸発器の吹出口
  • 還気口
  • 扉付近
  • 部屋の中央
  • 奥側
  • 上段・中段・下段
  • パレットやラックの内部
  • 製品を高密度に保管する場所
  • デフロスト運転の影響を受ける場所

蒸発器の冷気が直接当たる場所は、庫内で最も低い温度を示す可能性があります。この位置だけを監視すると、製品が置かれている区域よりも低い温度が記録され、保管状態を過大評価するおそれがあります。

一方、扉の直近では開閉のたびに大きな変化が発生します。この場所は扉開放や外気侵入を確認する診断点には適していますが、庫内全体を代表する唯一の測定点としては不十分な場合があります。

大型の冷蔵庫・冷凍庫では、次のような複数点配置を検討します。

  1. 扉側
  2. 庫内中央
  3. 奥側または還気側
  4. 上段・中段・下段など高さの異なる位置
  5. 過去に温度上昇が確認された場所

常設位置を決める前に、複数の仮設ロガーを使用して温度マッピングを行う方法も有効です。通常運転だけでなく、製品搬入、扉開閉、デフロスト、繁忙時間帯、夜間、夏季などを含めて評価します。

5.温度マッピングで測定点数を決める

必要なセンサー台数を床面積だけで一律に決めることはできません。

同じ広さの部屋でも、次の条件によって温度分布は異なります。

  • 部屋の形状と天井高
  • 空調・冷凍機の能力と配置
  • 扉の位置と開閉回数
  • ラックやパレットの配置
  • 製品の保管密度
  • 熱源、蒸気、水分の発生
  • 作業員や搬送機器の動き
  • デフロストの方式
  • 夏季・冬季の外気条件
  • 昼夜や生産シフトの違い

新規導入時には、最終的な常設台数より多い仮設ロガーを配置し、温度分布を一定期間確認します。

食品保管庫で仮設ロガーを使用して温度分布を確認する温度マッピング

仮設ロガーによる温度マッピングと常設位置の選定

温度マッピングでは平均値だけでなく、次の点を確認します。

  • 最も高温または低温になる場所
  • 設定値から外れる時間
  • 扉開閉後の回復時間
  • デフロスト中と終了後の変化
  • 上下方向の温度差
  • 製品搬入前後の変化
  • 繰り返し発生する偏り
  • センサー間の測定差

一度の試験結果だけで常設位置を決定せず、実際の操業条件で繰り返し発生する温度分布を基準にしてください。

設備更新、ラック移動、ライン変更、間仕切りの追加、冷凍機修理などがあった場合は、測定位置の再評価が必要です。

6.センサー、外部プローブ、通信方式を選ぶ

食品工場の温度監視システムは、単体の温度計だけでなく、次の要素を含めて選定します。

  • 測定範囲
  • 測定精度
  • 表示分解能
  • 応答時間
  • 温度のみ、または温湿度
  • 内蔵センサーまたは外部プローブ
  • 本体の記録容量
  • 電池または外部電源
  • 防じん・防水性能
  • 使用可能な湿度条件
  • 通信方式
  • 通信障害時のローカル記録
  • アラート機能
  • データ出力
  • APIや外部システムとの連携
  • 校正・精度確認の方法

なお、「精度」と「分解能」は異なります。

精度は、測定値が真値にどの程度近いかを示します。分解能は、表示または記録できる最小単位です。例えば0.1℃単位で表示できても、精度が±0.5℃であれば、実際の測定誤差が±0.1℃という意味ではありません。

UbiBot GS1シリーズ

UbiBot GS1シリーズは、温度・湿度の測定、ローカル記録、クラウド監視に対応するIoT環境センサーです。

GS1-Aは2.4GHz Wi-Fiを使用してクラウドへ直接接続できるため、工場内のWi-Fi環境が安定している場合は、ゲートウェイを追加せずに監視システムを構成できます。

本体には最大300,000件の測定記録を保存できるため、インターネット接続が一時的に停止しても測定を継続し、通信復旧後にデータを送信できます。

GS1シリーズには、Wi-Fi、携帯通信、有線LAN、RS485外部センサー接続など、構成の異なるモデルがあります。例えば、GS1-A1RSやGS1-AL4G1RSなどは、対応するRS485外部センサーを接続できます。

製造室の環境温湿度を測定する場合は内蔵センサーを利用し、冷蔵庫内部や設備内の測定では、設置条件に応じて外部プローブ対応モデルを検討できます。 UbiBot GS1シリーズ公式製品情報

ただし、IP65等級であっても、高圧洗浄水、蒸気、強い薬剤、継続的な結露に無条件で耐えられるという意味ではありません。洗浄区域では、感知部の通気性を維持しながら、本体、コネクター、電源および配線を保護する必要があります。

通信方式の選び方

通信方式 適した構成 主な確認事項
Wi-Fi 既存ネットワークが安定した製造室、倉庫、小規模施設 電波強度、2.4GHz対応、認証方式、ネットワーク分離
有線LAN 固定設備、通信安定性を重視する区域 配線経路、結露、洗浄、防水処理
RS485 外部プローブや設備信号を長距離配線する構成 ケーブル長、終端、ノイズ、アドレス管理
LoRa・特定小電力無線 大規模工場、複数棟、多数の測定点 金属壁、冷蔵庫パネル、ゲートウェイ位置
携帯通信 離れた倉庫、仮設施設、回線のバックアップ 電波、SIM、通信料金、契約条件

Wi-Fi対応製品でも、冷蔵庫・冷凍庫の断熱パネル、金属扉、設備、製品、水分などによって通信が弱くなる場合があります。設置前に実際の操業状態で通信試験を行ってください。

食品工場の温度センサーからゲートウェイとクラウドまでの監視システム構成

通信障害時のローカル記録に対応した温度監視構成

7.洗浄・結露・衝撃を考慮して設置する

食品工場では、センサーを正しく測定できる位置へ設置するだけでなく、衛生管理と清掃作業を妨げないことも重要です。

設置時には次の点を確認します。

食品工場で温度センサーを洗浄水や結露から保護して設置する方法

高圧洗浄や結露を考慮したセンサー設置

  • センサー周辺の空気が自然に流れる
  • 洗浄しにくい隙間や衛生上のデッドスペースを作らない
  • 定期点検や校正のために取り外せる
  • 高圧洗浄水が直接当たらない
  • 洗浄剤や殺菌剤が残留しない
  • 結露水が本体やコネクターへ流れ込まない
  • ケーブルにドリップループを設ける
  • 台車、パレット、フォークリフトと接触しない
  • 扉やシャッターに挟まれない
  • ケーブル貫通部を適切に密閉する

冷蔵庫や冷凍庫の断熱パネルへケーブルを通す場合は、断熱性能を損なわず、結露水や外気の侵入経路を作らない施工が必要です。

防水ボックスの中に温湿度センサーを完全に密閉すると、周囲の空気を正しく測定できず、温度や湿度への応答が遅くなる可能性があります。保護と通気性の両方を考慮してください。

8.クラウド、機器名、記録間隔を設定する

クラウド上の機器名を製造番号だけにすると、アラート発生時に設置場所を判断しにくくなります。

工場、建物、区域、ライン、位置、測定項目を組み合わせた命名規則を使用します。

例:

関東工場-第1棟-包装室-ライン02-中央-温湿度

短縮する場合は、次のように設定できます。

KNT-B1-PKG-L02-CTR-TH

同じ名称または機器IDを、次の記録でも統一します。

  • クラウド上の機器名
  • 工場レイアウト図
  • センサー本体のラベル
  • 校正記録
  • 点検記録
  • アラート対応手順
  • 機器台帳

測定間隔とクラウドへの送信間隔は分けて考えます。

短い測定間隔は、一時的な温度上昇や扉開閉の影響を把握しやすくします。一方、送信頻度を高くすると、通信量と電池消費が増える場合があります。

導入試験中は短めの測定間隔で変化を確認し、設備の応答速度、食品安全上のリスク、電源、通信、保存容量を考慮して運用値を決めます。

9.アラートを是正対応につなげる

食品工場で温度センサーを基準計器と比較し、通信や記録を確認する試運転の様子

基準計器との比較や通信試験を含む、導入後の試運転・妥当性確認

アラートは通知を送ること自体が目的ではありません。「誰が、何を確認し、どのように判断して対応するか」まで設定する必要があります。

事前に決める主な項目は次のとおりです。

  • 高温・低温のアラート値
  • 高湿度・低湿度のアラート値
  • アラートの継続時間
  • 復帰条件とヒステリシス
  • 一次対応者
  • 夜間・休日の連絡先
  • 未対応時のエスカレーション先
  • 機器オフライン通知
  • 電池残量低下通知
  • 停電時の代替確認方法
  • 逸脱時に保留する製品の範囲
  • 品質保証部門への報告条件
  • 記録の保存方法

蒸気洗浄や製品搬入で短時間だけ温度が変化する区域では、適切な遅延時間を設定すると不要な通知を抑えられます。

一方、冷凍機停止や扉の閉め忘れを早期に検知する必要がある区域では、長すぎる遅延時間が対応を遅らせる可能性があります。

アラート値は、インターネット上の一般値をそのまま使用せず、次の情報を基準に設定してください。

  • 製品仕様
  • 法令や通知
  • 業種別手引書
  • 自社の衛生管理計画
  • 検証済みの工程条件
  • 顧客要求
  • 冷蔵・冷凍設備の運用基準

10.通信障害・停電時にもデータを残す

クラウド型システムでは、センサーからクラウド、通知先までの経路を分けて確認する必要があります。

主な構成要素は次のとおりです。

  • センサー
  • センサー本体のローカル記録
  • Wi-Fiアクセスポイントまたは無線親機
  • ゲートウェイ
  • ルーター
  • インターネット回線
  • クラウドサービス
  • メールやアプリなどの通知経路
  • 各機器の電源

インターネット回線が停止しても、ローカル記録に対応したセンサーであれば測定を継続できます。ただし、通信停止中はクラウドアラートが届かない可能性があります。

通信復旧後には、保存されたデータが元の測定時刻でクラウドへ送信され、欠損や重複が発生していないことを確認してください。

停電中もアラートを届ける必要がある場合は、センサーだけでなく、アクセスポイント、ゲートウェイ、ルーター、上位回線にもバックアップ電源が必要です。

バックアップできない場合は、巡回、設備盤の警報、電話連絡などの代替手順を定めておきます。

11.導入後の試運転と妥当性確認

システムの試運転では、クラウド画面に数値が表示されることだけでなく、測定から現場対応までの全経路を確認します。

試運転項目

  1. センサーIDと実際の設置位置を照合する
  2. 安定後、校正済みまたは管理された基準計器と比較する
  3. 設置場所、比較日時、基準値、センサー値、許容差、判定を記録する
  4. 高温・低温のテストアラートを発生させる
  5. 設定した遅延時間で通知されることを確認する
  6. 一次対応者とエスカレーション先への通知を確認する
  7. Wi-Fiまたは上位回線を一時的に遮断する
  8. 通信停止中もローカル記録が継続することを確認する
  9. 復旧後に保存データが正しい順序と時刻で送信されることを確認する
  10. 停電時と電源復旧後の動作を確認する
  11. CSVやPDFなどの記録を出力する
  12. タイムゾーン、単位、機器名、測定期間が正しいことを確認する

現場で基準計器と比較する作業は、異常や大きな測定差を発見するうえで有効です。ただし、正式な計量トレーサビリティが求められる場合の校正に代わるものではありません。

12.校正・点検・変更管理

校正または精度確認の周期は、一律に決めるのではなく、次の条件を考慮して設定します。

  • 食品安全上の重要度
  • 要求される測定精度
  • メーカーの推奨
  • 使用温度・湿度
  • 結露や洗浄の影響
  • 過去の測定値のずれ
  • 顧客や認証規格の要求
  • 自社の品質管理手順

定期点検では、次の項目を確認します。

  • 本体と感知部の汚れ
  • 結露や水の侵入
  • ケーブル、コネクター、固定部の損傷
  • 電池残量と外部電源
  • 通信状態
  • センサーの位置ずれ
  • 機器ラベルとクラウド名
  • アラート受信者
  • 校正・精度確認の期限
  • 隣接する測定点との不自然な差

落下、強い衝撃、修理、極端な温湿度への暴露、説明できない測定差などがあった場合は、定期点検を待たずに確認します。

設備更新、製造ライン変更、ラック移動、間仕切り追加、空調変更なども、センサー位置とアラート設定を見直すきっかけになります。

13.日本市場で選べる温湿度監視システムの比較

以下は製品の優劣を決めるランキングではありません。

直接クラウド接続型、国内ワイヤレスデータロガー型、工場向け無線監視型という異なる構成を、食品工場への導入方法から比較しています。

比較項目 UbiBot GS1シリーズ T&D RTR507B+RTR500BW チノー MZ-T02+MZ-G10
システムの位置付け IoT温湿度センサー+クラウド監視 特定小電力無線ロガー+ネットワーク親機 920MHz帯無線ロガー+ゲートウェイ
基本測定項目 温度、相対湿度 温度、相対湿度 温度、相対湿度
温度測定範囲 GS1-A:-20~60℃ -25~70℃ 使用センサーMD9204:-20~60℃
公開されている代表温度精度 GS1-A:±0.2℃(0~60℃) ±0.3℃ センサー仕様で確認
湿度測定範囲 0~100%RH 0~99%RH 0~100%RH
公開されている代表湿度精度 GS1-A:±2%RH(10~90%RH) ±2.5%RH センサー仕様で確認
ローカル記録容量 最大300,000件 8,000件×2チャンネル 最大53,000件
センサー側の通信 モデルによりWi-Fi、携帯通信、有線LAN 特定小電力無線、Bluetooth 920MHz帯LoRa・FSK
上位側の通信 Wi-Fi、有線LAN、モデルにより携帯通信 RTR500BW:無線LAN・有線LAN MZ-G10:LTE、無線LAN、有線LAN
外部センサー GS1-Aは非対応。RS485対応モデルあり センサー交換式、シリーズ内に各種ロガーあり 温湿度、熱電対、測温抵抗体などから構成可能
保護に関する注意 IP65。感知部の通気、結露、高圧洗浄への追加対策が必要 本体IP64、温湿度センサー部は防水対象外 モデル・センサーごとに保護仕様を確認
特徴が生きる導入例 Wi-Fiや4Gを利用したクラウド監視、データ共有、API連携、ローカル記録を重視する場合 国内で広く使用されるデータロガー体系とWeb Storageを組み合わせたい場合 工場内の多数の測定点を920MHz帯で集約し、LTEやLANへ接続したい場合

T&D RTR507Bは、温度・湿度を記録するワイヤレスデータロガーです。温度範囲-25~70℃、代表精度±0.3℃、湿度代表精度±2.5%RH、8,000件×2チャンネルの記録容量が公開されています。RTR500BWなどの親機と組み合わせることで遠隔監視へ対応できます。 T&D RTR507B公式製品情報

チノーのリアルタイム無線ロガーMZシリーズは、温湿度のほか、熱電対、測温抵抗体、電圧入力などのモデルを組み合わせられます。MZ-G10ゲートウェイは、LTE、無線LAN、有線LANに対応し、工場内の多数の測定点を集約する構成に適しています。 チノー「リアルタイム無線ロガーMZシリーズ」

UbiBot GS1シリーズは、クラウドへの直接接続、最大300,000件のローカル記録、モデルによるWi-Fi・携帯通信・有線LAN・RS485の選択、Web・アプリ・APIによるデータ利用が特長です。

一方、T&Dは国内データロガー体系を利用したい場合、チノーMZシリーズは工場設備を含む多数の測定点を無線で集約したい場合に有力な選択肢です。

製品選定では測定精度だけでなく、次の条件も含めて比較してください。

  • 測定対象が環境温度か製品温度か
  • 冷蔵・冷凍温度への対応
  • センサー本体と感知部の防水性
  • ローカル記録容量
  • 通信障害後のデータ補完
  • 電源と停電対策
  • クラウド利用条件と保存期間
  • データ出力形式
  • アラートの種類と通知先
  • API、MES、SCADA、BMSとの連携
  • 校正サービス
  • 導入支援と保守体制

※製品仕様、対応通信、クラウド機能、契約プラン、価格、国内在庫は変更される可能性があります。導入または記事公開前に各メーカーの最新情報を確認してください。

14.導入規模別の構成例

導入規模 構成例 主な確認事項
小規模工場・実証導入 主要な製造室と冷蔵庫に直接通信型センサーを設置 測定位置、Wi-Fi、アラート値、記録出力
中規模・複数区域 製造室、包装室、冷蔵・冷凍庫ごとにセンサーと外部プローブを配置 命名規則、権限、校正、アラート担当者
大規模工場 Wi-Fi、有線、RS485、LoRaなどを区域別に組み合わせる 電波の死角、ゲートウェイ、ネットワーク分離、冗長化
複数工場・多拠点 各拠点の標準構成+本部でのクラウド一元管理 権限、データ保存期間、標準手順、API連携

よくある質問

食品工場には何台の温度センサーが必要ですか

床面積だけで一律に決めることはできません。工程、管理区域、空気の流れ、部屋の大きさ、ラック、扉、熱源、水分、製品配置などに基づいて決定します。導入前に仮設ロガーで温度マッピングを行うと、常設位置を判断しやすくなります。

HACCPでは温度センサーをどこに設置すればよいですか

自社の衛生管理計画で定めた工程や管理区域を測定できる場所へ設置します。重要管理点が食品の中心温度や加熱時間である場合、室温センサーだけでは代替できません。

環境温度を測れば、食品の中心温度測定は不要ですか

不要にはなりません。環境温度と食品の中心温度は異なる測定対象です。製品や工程で中心温度の確認が必要な場合は、適切なプローブや工程用計器を使用してください。

冷蔵庫のセンサーは吹出口に設置すればよいですか

吹出口は設備の動作確認には役立ちますが、庫内で最も低い温度を示す可能性があります。製品の保管環境を代表する位置を常設点とし、必要に応じて吹出口や扉側を診断用測定点として追加します。

IP65であれば高圧洗浄できますか

IP65だけで、食品工場の高圧洗浄、蒸気、薬剤、継続的な結露への耐性が保証されるわけではありません。本体、感知部、コネクター、電源部の仕様を個別に確認し、必要な保護措置を行ってください。

インターネットが切れた場合、測定記録はどうなりますか

ローカル記録に対応した機器であれば、通信停止中も測定を継続できます。ただし、クラウド経由のアラートは遅れる可能性があります。通信復旧後のデータ補完を導入時に試験してください。

温度センサーはどのくらいの頻度で校正すべきですか

食品安全上の重要度、要求精度、使用環境、メーカー推奨、過去の測定値のずれ、認証・顧客要求に基づいて決めます。落下、修理、極端な温度への暴露、説明できない測定差があった場合は、予定日を待たずに確認します。

アラート値は何度に設定すればよいですか

すべての食品工場に共通する値はありません。製品仕様、法令、業種別手引書、自社の衛生管理計画、検証済み工程条件、顧客要求に基づいて設定してください。

MESや設備監視システムと連携できますか

API、MQTT、データ転送機能などに対応したシステムであれば、MES、SCADA、BMS、品質管理システムなどと連携できる場合があります。連携時は機器ID、測定時刻、単位、アラート状態、欠損データの扱いを統一してください。

まとめ

食品工場の温度監視システムを設計する際は、最初に製品カタログを見るのではなく、工程フローと衛生管理計画を確認することが重要です。

製造室、包装室、冷蔵庫、冷凍庫には、それぞれ異なる温度分布とリスクがあります。代表測定点と設備付近のリスク監視点を分け、必要に応じて温度マッピングを実施して常設位置を決定します。

また、環境温度センサーは、食品の中心温度、加熱・冷却条件などの工程測定を自動的に代替するものではありません。各測定値の目的を明確にし、HACCPに基づく衛生管理へ正しく組み込む必要があります。

UbiBot GS1シリーズは、Wi-Fiや携帯通信を利用した遠隔監視、ローカル記録、クラウド上でのデータ共有、アラート、API連携を重視する食品工場に適した選択肢です。

導入時には、センサーの測定精度だけでなく、設置位置、洗浄・結露対策、通信障害、停電、アラート対応、校正、記録出力までを一つの監視システムとして試験してください。

まずは代表的な製造区域または冷蔵・冷凍設備で試験導入し、実際の操業条件における温度分布、通信状態、アラート運用を確認してから、工場全体や複数拠点へ展開することを推奨します。

参考資料

  1. 厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理について」
  2. 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」
  3. 一般財団法人食品安全マネジメント協会「JFS規格・文書」
  4. UbiBot GS1シリーズ公式製品情報
  5. T&D RTR507B公式製品情報
  6. T&D RTR500Bシリーズ概要仕様書
  7. チノー「リアルタイム無線ロガーMZシリーズ」
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