冷凍庫・超低温フリーザー用温度ロガーの選び方|外部プローブ・校正・停電対策

冷凍庫や超低温フリーザーの温度管理では、測定範囲だけを見てロガーを選ぶと、導入後に「本体が低温環境で動作しない」「扉を開けるたびにアラートが発生する」「停電中に通知できない」といった問題が起こることがあります。

特に-80℃クラスの超低温環境では、温度プローブだけを庫内へ入れ、記録・通信を行う本体は庫外に設置する構成が基本です。

超低温フリーザーを外部温度プローブと庫外のデータロガーで遠隔監視する研究施設

超低温フリーザーの庫内温度を外部プローブで測定し、庫外のロガーから遠隔監視する構成例

要点

冷凍庫用温度ロガーを選ぶ際は、次の点を確認します。

  • 管理対象の温度帯を十分にカバーできるか
  • プローブだけでなく、ロガーを含むシステム全体の精度が明確か
  • ロガー本体を庫外へ設置できる外部プローブ型か
  • ケーブルを通しても扉の密閉性を維持できるか
  • クラウド通信が停止しても内部記録を継続できるか
  • 高温・低温、オフライン、電池残量低下を通知できるか
  • 校正証明書の対象が本体、プローブ、または組み合わせ全体のどれか
  • フリーザー、ロガー、ルーター、通信回線の停電対策があるか

1.最初に管理温度と用途を決める

必要な測定範囲は、保管する物品とフリーザーの設定温度によって異なります。

主な用途 想定される温度帯の例 選定時の注意
冷蔵保管 2~8℃など 上下限アラートと扉開放の影響を確認
一般冷凍庫 -20℃前後 霜取り運転による周期的な温度上昇を考慮
低温冷凍庫 -30~-40℃前後 本体、電池、無線通信の動作温度を確認
超低温フリーザー -60~-90℃前後 Pt100などの外部プローブ型を基本に検討
研究・医薬品保管 管理基準による 校正、記録保存、逸脱対応、監査性を重視

これらは製品選定の目安であり、共通の管理基準ではありません。実際の警報値は、保管物の仕様書、施設の標準作業手順書、品質管理基準に基づいて設定してください。

医薬品を扱う場合は、厚生労働省の「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」も踏まえ、保管条件、温度記録、機器の校正、温度逸脱時の対応を一体として設計する必要があります。厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」

2.超低温環境では外部プローブ型を選ぶ

超低温フリーザーでは、ロガー本体を庫内へ直接入れる構成は一般に適していません。

温度範囲がセンサー仕様内であっても、本体の電子部品、表示器、電池、無線通信機能が-80℃で動作できるとは限らないためです。また、低温環境では電池性能が低下し、庫内の金属構造や断熱材が無線通信を妨げる場合もあります。

外部プローブ型では、次のように役割を分けます。

  • 温度プローブ:庫内温度を測定
  • ケーブル:フリーザーの測定孔や扉周辺を通過
  • ロガー本体:庫外で記録、通信、警報処理
  • クラウド:履歴表示、通知、データ共有

ケーブルを扉に挟む場合は、パッキンの変形、断線、結露水の侵入に注意します。可能であれば、メーカーが用意した測定孔やアクセスポートを使用してください。

3.Pt100・サーミスタ・熱電対の違い

冷凍庫で使用される代表的な温度センサーには、Pt100、サーミスタ、熱電対があります。

センサー方式 主な特徴 適した用途
Pt100 安定性と再現性に優れ、広い温度範囲に対応しやすい 超低温フリーザー、研究設備、校正を重視する用途
サーミスタ 小型で感度が高く、一般的な低温域で使いやすい 冷蔵庫、冷凍庫、食品・倉庫管理
熱電対 非常に広い温度範囲に対応でき、応答が速い 試験設備、産業設備、特殊な温度測定

方式だけで性能は決まりません。センサー素子に加え、ロガーの測定回路、ケーブル、接続部を含むシステム全体の精度を確認することが重要です。

4.仕様表で確認したい項目

測定範囲

通常の設定温度だけでなく、異常時に想定される温度まで測定できるか確認します。-80℃で使用する場合、下限が-40℃の製品では対応できません。

測定精度

「±0.3℃」などの仕様が、どの温度範囲で適用されるかを確認します。室温付近の精度と超低温域の精度が同じとは限りません。

分解能

0.01℃単位で表示されても、0.01℃の精度で測定できるとは限りません。表示分解能と測定精度は別の仕様です。

プローブとケーブル

次の項目を確認します。

  • プローブの長さと直径
  • ケーブル長
  • ケーブルの低温耐性
  • コネクターの形状
  • 防水性能の対象範囲
  • 交換用プローブの入手性
  • 延長ケーブル使用時の精度条件

IP68などの保護等級がプローブに記載されていても、ロガー本体やコネクターまで同じ防水性能を持つとは限りません。

5.プローブはどこに設置するか

超低温フリーザー内の適切な温度プローブ設置位置と避けたい測定位置

外部プローブは、冷気吹出口や内壁、扉付近を避け、保管物の温度環境を代表できる位置に設置します。

プローブは、フリーザー内部の代表的な温度を測定できる場所に設置します。

避けたい位置は次のとおりです。

  • 冷気吹出口の直近
  • 内壁や冷却器への直接接触
  • 扉やパッキンのすぐ近く
  • 除霜ヒーターの影響を受ける場所
  • 収納物の出し入れでプローブが動く場所

庫内の温度分布は、棚の高さ、収納量、空気循環、扉開閉によって変化します。重要な保管用途では、複数点による温度マッピングを行い、低温点・高温点・代表点を把握してから常設位置を決めます。

プローブをグリコール液などの熱緩衝材へ入れる方法は、短時間の扉開放による温度変化を抑えるのに有効です。ただし応答が遅くなるため、何を監視したいのかを明確にして採用してください。

6.校正証明書とJCSSを確認する

温度校正槽で外部プローブと基準温度計を比較する校正作業

温度ロガーの校正では、使用するプローブと基準計器を同じ安定した温度環境で比較します。

校正と調整は異なる

校正とは、測定器の表示値と基準となる標準器の値との関係を確認する作業です。校正を実施しても、測定器の表示が自動的に修正されるとは限りません。

調整は、表示値が基準値へ近づくように機器を変更する作業です。

証明書の対象範囲を見る

外部プローブ型では、次のどこまでが校正対象かを確認します。

  • プローブだけ
  • ロガー本体だけ
  • プローブとロガーを組み合わせた状態
  • ケーブルや入力モジュールを含むシステム全体

実際に使用する組み合わせで校正されていなければ、接続機器を変更したときに同じ結果が得られるとは限りません。

JCSS校正は必ず必要か

JCSSは、計量法に基づく校正事業者登録制度です。登録事業者が発行するJCSS標章付き校正証明書は、国家計量標準へのトレーサビリティを示す手段の一つです。製品評価技術基盤機構「計量法校正事業者登録制度(JCSS)」

すべての冷凍庫監視でJCSS校正が必須というわけではありません。顧客要求、監査要件、研究計画、社内品質基準に基づいて必要性を判断します。

校正点は、0℃や室温だけでなく、実際に使用する-20℃、-80℃付近などを含めて検討することが重要です。

7.アラートは運用手順とセットで設計する

温度アラートでは、しきい値だけでなく継続時間も設定します。

扉開放や霜取り運転による短時間の上昇ですぐ通知すると、不要なアラートが多発します。一方、遅延時間を長くしすぎると、故障の発見が遅れます。

導入前に次の項目を決めます。

  • 高温・低温の警報値
  • 警報の継続時間
  • 復帰条件とヒステリシス
  • 機器オフライン通知
  • 電池残量低下通知
  • 一次対応者と連絡先
  • 夜間・休日のエスカレーション
  • 保管物を移動する判断基準
  • 温度逸脱時に残す記録

フリーザー本体の警報と外部温度ロガーは競合するものではありません。内蔵警報は装置の制御異常を早期に検知し、外部ロガーは独立した温度履歴と遠隔通知を補完します。

8.停電対策は通信経路全体で考える

冷凍庫の温度ロガーが通信障害中にデータを保存し復旧後クラウドへ再送する仕組み

通信障害中はロガーへ測定値を保存し、回線復旧後にクラウドへ送信できる構成が欠測対策に有効です。

電池式ロガーを使用していても、ルーターや光回線終端装置が停止すればクラウド通知は届きません。

停電時の確認対象は次のとおりです。

  • 冷凍庫・超低温フリーザー
  • 温度ロガー
  • 外部プローブ
  • Wi-Fiルーター
  • インターネット回線
  • 携帯通信機器
  • クラウド通知
  • 非常用電源または発電機
  • 現場担当者への連絡経路

ロガーには、通信停止中も測定データを本体へ保存できる機種を選びます。通信復旧後に、保存データが本来の測定時刻で補完されることも試験してください。

PMDAが公開する血液保冷庫・冷凍庫の添付文書でも、温度記録計、温度警報、停電警報、外部警報および定期点検の確認が重要事項として示されています。PMDA「血液保冷庫・冷凍庫 添付文書」

9.UbiBotで構成する場合

UbiBotで超低温フリーザーを監視する場合は、WS1 Proを庫外に設置し、外部PT100プローブを庫内へ入れる構成を検討できます。

UbiBot PT100温度プローブの日本公式製品情報では、次の仕様が案内されています。

  • 温度測定範囲:-200~400℃
  • プローブサイズ:直径6×200mm
  • Micro USB接続
  • WS1 Pro対応
  • Modbus RTU
  • プローブ部IP68

UbiBot PT100温度プローブ公式製品情報

WS1 ProはWi-Fiを利用して測定データをクラウドへ送信し、Webやアプリから履歴を確認できます。温度アラート、機器オフライン通知、複数ユーザーでの共有にも利用できます。UbiBot WS1 Pro公式製品情報

重要なのは、PT100の測定範囲とWS1 Pro本体の使用環境を混同しないことです。超低温フリーザーではPT100プローブだけを庫内に設置し、WS1 Pro本体とコネクター部分は庫外の結露しにくい場所で保護します。

Wi-Fiを確保しにくい施設では、4G対応モデルも選択肢になります。ただし、対応する外部センサー、通信プラン、電源条件を購入前に確認してください。

10.日本市場で選べる構成例

以下はランキングではなく、システム構成の違いを整理したものです。

構成例 UbiBot WS1 Pro+PT100 T&D RTR505B+Pt100入力 フリーザー内蔵記録計
基本構成 Wi-Fiロガー+外部PT100+クラウド 無線ロガー+入力モジュール+Pt100+親機 フリーザー本体に内蔵
公開測定範囲 PT100:-200~400℃ Pt100/Pt1000入力:-199~600℃ 装置ごとに異なる
遠隔確認 Web、アプリ、クラウド 親機・Web Storageなど 外部警報・通信機能の有無を確認
特徴が生きる用途 導入しやすいクラウド監視、複数拠点共有 国内ロガー体系、入力方式や収集機を組み合わせたい場合 装置状態と温度を一体管理したい場合
購入前の確認 校正条件、ケーブル経路、本体の設置環境 Ptセンサー、入力モジュール、親機、校正範囲 データ出力、独立性、停電時の通知

T&D RTR505Bは、Pt100/Pt1000入力モジュール使用時に-199~600℃の測定範囲が案内されています。利用にはセンサー、入力モジュール、必要に応じて親機を含む構成確認が必要です。T&D RTR505B公式製品情報

どの方式にも適した用途があります。測定範囲だけでなく、クラウド利用、校正、警報、データ保存、保守体制まで含めて比較してください。

購入前チェックリスト

  • 管理温度をカバーする測定範囲がある
  • 使用温度域での精度が確認できる
  • プローブとロガーを組み合わせた精度が明確である
  • ロガー本体を庫外へ設置できる
  • ケーブル長と配線方法が適切である
  • 扉のパッキンや測定孔を傷めない
  • 通信障害中もローカル記録できる
  • 高温・低温・オフライン通知を設定できる
  • 必要な温度点で校正できる
  • 校正証明書の対象機器が明確である
  • 停電時の電源と通信経路を確認した
  • 温度逸脱時の対応手順が決まっている

よくある質問

-80℃フリーザーにロガー本体を入れてもよいですか

本体の動作温度が-80℃に対応していない限り、入れないでください。通常は外部プローブだけを庫内へ入れ、本体を庫外に設置します。

プローブの測定範囲が-200℃までなら、必ず-80℃で正確に測れますか

測定可能範囲と精度保証範囲は異なります。実際に使用する温度付近の精度、校正結果、ロガーとの組み合わせを確認してください。

フリーザーの表示温度と外部ロガーの値が違うのは異常ですか

必ずしも異常ではありません。センサー位置、応答時間、霜取り運転、空気温度と保管物温度の違いなどが影響します。差が継続する場合は、校正状態と設置位置を確認してください。

校正は毎年必要ですか

一律の周期はありません。メーカー推奨、顧客要求、監査基準、使用環境、過去のドリフトに基づいて決めます。衝撃、断線、修理、プローブ交換があった場合は、定期校正を待たずに精度確認を行います。

Wi-Fiが切れるとデータは失われますか

ローカル記録対応機器であれば、通信停止中も測定を継続できます。ただし、保存容量と復旧後の再送信動作を導入時に確認してください。

UPSを設置すれば停電対策は十分ですか

UPSの対象範囲によります。ロガーだけでなく、フリーザー、ルーター、通信回線、外部警報まで含めて確認する必要があります。

まとめ

冷凍庫・超低温フリーザー用温度ロガーでは、測定範囲だけでなく、外部プローブ、使用温度域での精度、校正、記録、遠隔通知、停電対策を一つのシステムとして検討することが重要です。

超低温環境では、ロガー本体を庫外へ置き、Pt100などの外部プローブだけを庫内に設置する構成が基本です。プローブ位置は温度マッピングに基づいて決め、校正証明書については対象機器と校正温度点を確認してください。

UbiBot WS1 ProとPT100温度プローブの組み合わせは、-80℃クラスを含む低温設備の温度をクラウドで確認し、複数担当者へ異常を通知したい場合に検討しやすい構成です。

導入前には、使用するフリーザーの設定温度、必要な精度、校正要件、Wi-Fiまたは4Gの通信環境を整理し、実機でアラート・通信障害・停電復旧試験を行ってください。

参考資料

  1. 厚生労働省「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」
  2. 製品評価技術基盤機構「計量法校正事業者登録制度(JCSS)」
  3. PMDA「血液保冷庫・冷凍庫 添付文書」
  4. UbiBot PT100温度プローブ公式製品情報
  5. UbiBot WS1 Pro公式製品情報
  6. T&D RTR505B・RTR505BL公式製品情報

※製品仕様、対応機器、校正サービス、クラウド機能、通信プランおよび国内在庫は変更される場合があります。公開または購入前に、各メーカーの最新仕様書と見積条件をご確認ください。

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