HACCPに沿った衛生管理では、冷蔵庫や冷凍庫の温度を測るだけでなく、あらかじめ決めた方法で確認・記録し、異常があった場合の対応を残すことが重要です。
温度記録がなければ、食品が適切な状態で保管されていたか、設備異常がいつ発生したか、どの食品に影響した可能性があるかを後から確認できません。
本記事では、冷蔵・冷凍設備で記録すべき項目、確認頻度、保存期間、基準から外れた場合の対応を解説します。紙の点検表、データロガー、クラウド監視の違いも整理します。
HACCPに沿った冷蔵・冷凍庫の温度管理では、測定値の確認だけでなく、継続的な記録と異常時の対応が重要です。
要点
冷蔵・冷凍庫の温度管理では、次の点を決めておきます。
- どの設備を、いつ、どの方法で確認するか
- 管理基準と判断責任者
- 記録する項目と保存期間
- 温度異常時の確認・隔離・評価方法
- 温度計やセンサーの精度確認方法
- 停電、通信障害、機器故障時の代替手順
IoT温度ロガーは、連続記録や遠隔通知によって温度管理を支援します。ただし、機器を設置するだけでHACCP対応が完了するわけではありません。衛生管理計画、運用手順、記録の確認、逸脱時の対応まで含めて仕組みを構築する必要があります。
1.HACCPで冷蔵・冷凍庫の温度記録が必要な理由
厚生労働省が公開する小規模な一般飲食店向け手引書では、一般的衛生管理のポイントとして「冷蔵・冷凍庫の温度の確認」が挙げられています。
同手引書では、次の流れが示されています。
- 衛生管理計画を作成する
- 計画に基づいて実施する
- 実施結果と問題発生時の対応を記録する
- 記録を定期的に振り返る
つまり、温度の現在値を確認するだけでなく、「計画どおりに確認したこと」と「問題発生時に適切に対応したこと」を説明できる記録が必要です。厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」
2.冷蔵・冷凍庫の温度記録に残す項目
実務では、最低限、次の項目を記録できるようにします。
| 記録項目 | 内容 |
|---|---|
| 確認日時 | 測定または点検を行った年月日・時刻 |
| 設備情報 | 店舗、冷蔵庫、冷凍庫、保管室などの名称 |
| 測定温度 | 確認時の庫内温度 |
| 判定結果 | 管理基準内か、基準から外れているか |
| 確認方法 | 表示器、温度計、外部プローブ、ロガーなど |
| 確認者 | 点検担当者または記録確認者 |
| 異常内容 | 高温、停電、扉の閉め忘れ、機器故障など |
| 対応内容 | 再測定、食品の移動・隔離、修理依頼など |
| 最終判断 | 使用、加熱、廃棄、返品などの判断と責任者 |
自動記録を利用する場合も、設備名やセンサーIDだけでなく、異常時に誰が確認し、どのような判断をしたかを別途記録できる運用が必要です。
3.温度基準は食品と業態に合わせて決める
厚生労働省の小規模飲食店向け手引書では、確認例として「冷蔵10℃以下、冷凍-15℃以下」が示されています。
ただし、これはすべての食品や業態に共通する一律の基準ではありません。食品ごとの保存基準、製品表示、取引条件、事業者向けHACCP手引書、社内の衛生管理計画を優先してください。
より低い温度での管理を必要とする食品や、冷凍食品、食肉、魚介類、乳製品など、個別の基準が定められている場合があります。
また、庫内の空気温度と食品の中心温度は同じではありません。工程上、食品そのものの温度確認が必要な場合、庫内温度ロガーだけで代用することはできません。
4.温度はどのくらいの頻度で記録するべきか
確認頻度は、事業内容、食品の種類、設備性能、過去の異常、営業時間などに基づいて決めます。
手作業による確認では、例えば次のタイミングが考えられます。
- 始業前
- 作業中または商品の入出庫後
- 業務終了時
- 停電や設備異常の復旧後
紙の点検表は導入しやすい一方、点検時刻の間に発生した温度上昇を把握できない場合があります。
連続記録型の温度ロガーを使用すると、夜間、休日、霜取り運転中、扉の閉め忘れなどによる変化を時系列で確認できます。ただし、測定間隔を短くするほどデータ量や電池消費が増えるため、検知したい異常の速さに合わせて設定します。
5.紙・データロガー・クラウド監視の違い
紙の点検表、単体データロガー、クラウド監視では、記録方法と異常発見までの流れが異なります。
| 記録方法 | 主なメリット | 運用上の注意 |
|---|---|---|
| 紙の点検表 | 導入しやすく、現場で確認できる | 記入漏れ、転記ミス、点検間の異常を把握しにくい |
| 単体データロガー | 連続記録が可能で、通信環境がなくても使用できる | 定期的な回収、保存、グラフ確認が必要 |
| クラウド温度ロガー | 遠隔確認、複数拠点管理、アラート、データ共有がしやすい | 通信、電源、アカウント、通知先の管理が必要 |
| 紙+自動記録 | 現場確認と連続履歴を組み合わせられる | 重複作業にならないよう役割を明確にする |
どの方式が適しているかは、設備数、拠点数、夜間対応の必要性、監査資料の作成方法によって異なります。
小規模店舗では紙と表示温度計でも運用できます。一方、複数の冷蔵・冷凍庫を管理する施設や、営業時間外の異常を早期に知る必要がある場合は、クラウド型温度ロガーが有効です。
6.温度記録はどのくらい保存するのか
温度記録の保存期間を、すべての食品事業者に共通する一つの期間で説明することはできません。
厚生労働省の「食品等事業者の記録の作成及び保存に係る指針」では、食品の消費期限・賞味期限や流通実態に応じて、合理的な保存期間を設定することが基本とされています。期間を設定しにくい場合の参考として、製造・加工・流通段階では販売後1~3年間、販売段階では販売後1~3か月が示されています。厚生労働省「食品等事業者の記録の作成及び保存に係る指針」
実際の保存期間は、次の条件を確認して決定します。
- 業種別HACCP手引書
- 食品の消費期限・賞味期限
- 法令や自治体の指導
- 取引先との契約
- 認証規格や社内規定
- 事故発生時に遡って確認すべき期間
保存期間だけでなく、必要な記録を検索・閲覧・出力できることも重要です。電子記録では、担当者の退職やサービス変更後もデータを取り出せるか確認してください。
7.温度が基準から外れた場合の対応
温度異常が発生しても、表示値だけで食品を直ちに使用可能または廃棄と判断することはできません。あらかじめ定めた手順に従って、次の順序で対応します。
- 別の温度計や基準計器で異常を再確認する
- 扉、電源、設定温度、霜取り、センサー位置を確認する
- 影響を受けた可能性のある食品を特定・隔離する
- 温度と継続時間、食品の状態、保存条件を確認する
- 責任者が使用、移動、加熱、返品、廃棄などを判断する
- 設備の修理や設定変更を行う
- 異常原因、対象食品、判断、対応結果を記録する
- 同じ異常が繰り返される場合は管理方法を見直す
厚生労働省の手引書でも、庫内温度に異常があった場合には、原因確認、設定温度の再調整、故障時の修理依頼、食材の状態に応じた使用中止または加熱などが例示されています。
温度逸脱時は、再確認、対象食品の隔離、設備点検、処置判断、対応記録までを一連の手順として管理します。
8.アラート値を設定するときの注意点
クラウド型ロガーのアラート値は、製品の保存基準と施設の運用に基づいて設定します。
短時間の扉開放や自動霜取りによって通知が頻発する場合は、継続時間や通知遅延を調整できます。ただし、遅延を長くしすぎると、本当に対応が必要な異常の発見が遅れます。
次の項目をセットで決めてください。
- 注意アラートと緊急アラートの温度
- 基準超過の継続時間
- 通知先と夜間・休日の担当者
- 一次対応の期限
- 担当者が応答しない場合の連絡先
- 通信切断、電池残量低下、停電時の対応
アラートは異常の可能性を知らせる機能です。食品の安全性に関する最終判断は、保存条件、経過時間、食品の状態、社内基準などを確認して行います。
9.UbiBotを冷蔵・冷凍庫の温度管理に活用する方法
UbiBot WS1 Proは、Wi-Fiまたは対応モデルの4G通信を利用して、測定データをクラウドで確認できるIoTセンサーです。温度・湿度測定、外部温度センサー接続、アラート、データ共有に対応し、本体には最大30万件の検出記録を保存できます。UbiBot WS1 Pro公式製品情報
冷蔵・冷凍庫では、WS1 Pro本体を庫外に設置し、外部温度プローブだけを庫内へ入れる構成を検討できます。本体を庫外に置くことで、低温による電池性能低下や無線通信への影響を抑えやすくなります。
UbiBotのMicro USB接続型温度プローブは、測定範囲-55~125℃、-10~85℃における精度±0.5℃と案内されています。一般的な冷蔵・冷凍設備の監視に利用できる構成です。UbiBot Micro USB温度センサー公式製品情報
より広い温度範囲が必要な設備には、WS1 Pro対応のPT100温度プローブも用意されています。公式仕様では測定範囲-200~400℃、プローブ部IP68、Modbus RTU対応です。UbiBot PT100温度プローブ公式製品情報
本体を庫外、外部温度プローブを庫内に設置することで、低温環境の温度履歴をクラウドから確認できます。
導入時に確認するポイント
- プローブを扉、冷却吹出口、除霜ヒーターの直近に置かない
- 実際の保管品を代表できる場所を選ぶ
- ケーブルを挟んで扉の密閉性を損なわない
- 基準計器との比較で測定差を確認する
- 通信を切断し、ローカル記録と復旧後の動作を試験する
- テストアラートで担当者まで通知されることを確認する
- 機器IDと冷蔵・冷凍庫の名称を対応付ける
UbiBotは温度の記録・可視化・通知を支援するシステムです。HACCPへの適合性は、食品事業者が策定する衛生管理計画、校正・精度管理、記録保存、逸脱対応を含む運用全体で判断されます。
10.導入前チェックリスト
- 対象となる冷蔵庫・冷凍庫を一覧化した
- 食品・業態に適した温度基準を確認した
- 測定位置と記録頻度を決めた
- 設備名、日時、温度、判定を記録できる
- 異常時の責任者と対応手順を決めた
- 記録の保存期間を文書化した
- センサーの精度確認または校正方法を決めた
- 停電・通信障害時の代替確認方法を用意した
- 保存データを検索・出力できる
- アラート通知テストを実施した
よくある質問
HACCPでは温度ロガーの設置が義務ですか
必ずしも温度ロガー自体が義務付けられているわけではありません。事業内容に適した方法で温度を確認し、計画に基づく実施と記録、異常時の対応を説明できることが重要です。
クラウドの温度履歴があれば紙の記録は不要ですか
電子記録を衛生管理記録として利用できる場合があります。ただし、異常時の対応内容、確認者、食品の処置など、温度データだけでは分からない情報も記録してください。自治体、認証機関、取引先が指定する様式がある場合は、その要件を優先します。
冷蔵庫と冷凍庫は何℃に設定すればよいですか
厚生労働省の小規模飲食店向け手引書では、冷蔵10℃以下、冷凍-15℃以下が確認例として示されています。ただし、食品ごとの保存基準、製品表示、業種別手引書、社内基準を確認し、必要に応じてより厳しい値を設定してください。
一時的に温度が上がったら食品を廃棄すべきですか
温度だけで一律に判断するのではなく、基準を超えた時間、食品の種類、包装状態、中心温度、保存基準などを確認します。判断基準を衛生管理計画に定め、責任者による判断と対応内容を記録してください。
インターネットが切れた場合は記録できませんか
ローカル記録に対応する機器であれば、通信停止中も測定データを本体に保存できます。ただし、通信停止中はクラウド通知を受け取れない可能性があります。導入時に回線切断試験を行い、代替確認手順を決めてください。
温度センサーの校正は必要ですか
要求精度、メーカー推奨、使用環境、取引先・認証規格の要件に基づいて決定します。正式な校正が必要でない場合でも、信頼できる基準計器との定期的な比較は、故障やドリフトの早期発見に有効です。
まとめ
HACCPに沿った冷蔵・冷凍庫の管理では、温度を測るだけでなく、確認方法、頻度、基準、保存期間、異常時の対応をあらかじめ決めて記録することが重要です。
紙の点検表は簡単に始められますが、点検間の変化までは把握できません。クラウド型温度ロガーを利用すると、連続記録、遠隔確認、異常通知、複数設備の一元管理を行いやすくなります。
UbiBot WS1 Proと外部温度プローブを組み合わせることで、ロガー本体を庫外に置きながら冷蔵・冷凍庫内の温度を継続的に監視できます。導入時には、測定位置、通信、ローカル記録、アラート、精度確認まで試験し、既存の衛生管理計画へ組み込んでください。
参考資料
- 厚生労働省「HACCP(ハサップ)」
- 厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」
- 厚生労働省「冷凍・冷蔵商品販売事業者(加工食品卸業)に向けたHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書」
- 厚生労働省「食品等事業者の記録の作成及び保存に係る指針」
- UbiBot WS1 Pro公式製品情報
- UbiBot Micro USB温度センサー公式製品情報
- UbiBot PT100温度プローブ公式製品情報
※食品ごとの保存基準、自治体の指導、HACCP手引書、製品仕様、クラウド機能は変更される場合があります。公開・導入前に、所管保健所および各メーカーの最新情報をご確認ください。