温度センサーには、サーミスタ、Pt100などの測温抵抗体、熱電対、半導体センサーなど、異なる原理を利用した方式があります。
「精度が高い方式を選べばよい」と考えがちですが、実際には測定対象、温度範囲、応答速度、設置環境、配線、記録方法によって適した方式が変わります。
例えば、オフィスの室温監視、冷凍庫内部の測定、配管表面の温度確認、高温炉の管理では、必要なセンサー構造も測定範囲も同じではありません。
本記事では、代表的な4種類の温度センサーについて、仕組みと特徴、用途別の選び方をわかりやすく解説します。
サーミスタ、Pt100、熱電対、半導体温度センサーは、異なる原理で温度を電気信号へ変換します。
要点
- サーミスタは、限られた温度範囲で高い感度を得やすい
- Pt100は、白金の抵抗変化を利用し、安定性と再現性を重視する用途に適する
- 熱電対は、広い温度範囲や高温、応答性が必要な測定に向く
- 半導体センサーは、小型化・低消費電力・デジタル化に適する
- センサー素子だけでなく、プローブ構造、配線、記録計まで含めて選ぶ
- カタログ精度と、実際の設置後に得られる測定精度は同じとは限らない
1.温度センサーは何を測っているのか
温度センサーは、温度によって変化する物理量を電気信号へ変換する部品です。
方式によって利用する変化が異なります。
| センサー方式 | 温度の検出原理 |
|---|---|
| サーミスタ | 半導体材料の電気抵抗変化 |
| Pt100 | 白金の電気抵抗変化 |
| 熱電対 | 異なる金属間に生じる熱起電力 |
| 半導体センサー | 半導体接合部などの電気的特性の変化 |
実際の温度測定システムは、センサー素子だけで構成されているわけではありません。
- センサー素子
- 保護管またはケース
- ケーブルとコネクター
- 信号変換回路
- 温度ロガーまたは表示器
- ソフトウェアやクラウド
- 校正・補正条件
これらすべてが測定結果に影響します。そのため、センサー素子の公称精度だけで製品を比較するのは適切ではありません。
サーミスタとPt100は抵抗変化、熱電対は熱起電力、半導体センサーは半導体特性の変化を利用します。
2.サーミスタの仕組みと特徴
サーミスタは、温度によって電気抵抗が大きく変化する半導体部品です。温度測定で広く使われるのは、温度上昇に伴って抵抗値が低下するNTCサーミスタです。
村田製作所の技術解説では、NTCサーミスタは金属酸化物を主原料とし、温度上昇に対して抵抗値が減少する特性を持つと説明されています。村田製作所「NTCサーミスタとは?動作原理」
メリット
- 温度変化に対する感度が高い
- 小型化しやすい
- 応答の速い構造を作りやすい
- 比較的低価格
- 家電、空調、バッテリー、温度ロガーなどに組み込みやすい
注意点
- 温度と抵抗値の関係が直線的ではない
- 使用できる温度範囲は製品によって異なる
- 自己発熱が測定誤差になる場合がある
- 高温域や長期安定性を重視する用途では、別方式が適することがある
サーミスタは、冷蔵・冷凍設備、空調機器、電子機器など、比較的限定された温度範囲を効率よく測りたい用途で有力な選択肢です。
3.Pt100の仕組みと特徴
Pt100は、白金の電気抵抗が温度によって変化する性質を利用した測温抵抗体です。「Pt」は白金、「100」は0℃における公称抵抗値が100Ωであることを示します。
日本電気計測器工業会は、工業用の白金測温抵抗体がJIS C 1604で規格化され、Pt100、Pt500、Pt1000などが規定されていると説明しています。JEMIMA「測温抵抗体」
メリット
- 安定性と再現性に優れる
- 温度と抵抗値の関係が比較的扱いやすい
- 低温から中高温域まで利用できる
- 品質管理、研究、設備監視に適する
- 3線式や4線式で配線抵抗の影響を抑えられる
注意点
- 測定には電流を流す必要があり、自己発熱が起こる可能性がある
- 2線式ではケーブルの抵抗が誤差に含まれやすい
- 細い抵抗線を用いる構造では、振動や衝撃に注意が必要
- 熱電対より高温域の選択肢が限られる場合がある
2線式・3線式・4線式の違い
| 配線方式 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 2線式 | 構成が簡単だが、リード線抵抗の影響を受けやすい | 短距離、簡易測定 |
| 3線式 | リード線抵抗を補正しやすい | 一般的な工業計測 |
| 4線式 | リード線抵抗の影響をより小さくできる | 研究、校正、高精度測定 |
ただし、Pt100を使えば自動的に高精度になるわけではありません。プローブ構造、変換回路、配線方式、挿入深さ、校正状態まで含めた確認が必要です。
4.熱電対の仕組みと特徴
熱電対は、異なる2種類の金属を接続し、その接点に温度差が生じたときに発生する微小な電圧を利用して温度を測ります。この現象はゼーベック効果と呼ばれます。
JIS C 1602では、K、J、T、E、N、R、S、Bなどの熱電対が規定されています。JEMIMA「熱電対」
メリット
- 非常に広い温度範囲へ対応できる
- 高温測定に適する種類がある
- 細径にすれば応答を速くできる
- 振動や衝撃に比較的強い構造を作れる
- 炉内、設備、配管、金属加工などに利用しやすい
注意点
- 発生する電圧が小さく、ノイズ対策が必要
- 基準接点補償が必要
- 熱電対の種類と補償導線を正しく組み合わせる必要がある
- 高温での長期使用により劣化やドリフトが起こる可能性がある
- 接点構造や保護管によって応答性が変化する
熱電対は「すべての用途で最も優れたセンサー」ではありません。高温や広い測定範囲に強い一方、室温や冷蔵庫の安定監視では、Pt100やサーミスタの方が扱いやすい場合があります。
5.半導体温度センサーの仕組みと特徴
半導体温度センサーは、半導体接合部などの電圧や電流が温度によって変化する性質を利用します。
センサー素子、補正回路、A/D変換器、デジタル通信機能を一つのICにまとめた製品もあり、IoT機器や温湿度センサーで広く使用されています。
メリット
- 小型化しやすい
- 低消費電力の製品が多い
- デジタル出力に対応しやすい
- 温湿度など複数項目を一体化しやすい
- IoT端末や無線ロガーへ組み込みやすい
注意点
- 測定可能な温度範囲が比較的限られる
- 基板や本体の発熱が測定値に影響する場合がある
- ケース内部の通風や設置位置によって応答が変わる
- センサー単体を交換できない製品もある
- 結露や薬剤、粉じんへの耐性を確認する必要がある
オフィス、倉庫、サーバールーム、温室などの空気温度を連続監視する用途では、小型でクラウド連携しやすい半導体式センサーが適しています。
6.4種類の温度センサーを比較
以下は一般的な傾向です。実際の性能は、センサーの型式、構造、測定回路、温度範囲によって異なります。
| 比較項目 | サーミスタ | Pt100 | 熱電対 | 半導体センサー |
|---|---|---|---|---|
| 検出原理 | 半導体の抵抗変化 | 白金の抵抗変化 | 熱起電力 | 半導体特性の変化 |
| 得意な温度域 | 限定された低~中温域 | 低~中高温域 | 低温~非常に高い温度 | 主に環境温度域 |
| 感度 | 高い | 比較的高い | 種類による | 製品による |
| 直線性 | 補正が必要 | 比較的良好 | 補正が必要 | 内部補正対応品が多い |
| 応答性 | 小型なら速い | プローブ構造による | 細径なら速い | ケースと通風による |
| 長期安定性 | 製品による | 優れる | 高温使用では劣化に注意 | 製品・環境による |
| 主な用途 | 冷蔵設備、家電、電子機器 | 品質管理、研究、冷凍庫、設備監視 | 炉、配管、熱処理、設備 | 室内、倉庫、IoT環境監視 |
| 主な注意点 | 非直線性、自己発熱 | 配線抵抗、自己発熱 | 冷接点補償、ノイズ | 本体発熱、測定範囲 |
どの方式が最良かではなく、「測定条件に合っているか」で判断することが重要です。
7.用途別に選ぶ温度センサー
空気温度、冷凍庫、配管、高温炉では、適した温度センサーと設置方法が異なります。
オフィス・倉庫の空気温度
本体内蔵型の半導体センサーや温湿度一体型センサーが使いやすい構成です。
温度だけでなく湿度も同じ位置で記録でき、Wi-Fiやモバイル通信を利用した遠隔監視にも適しています。ただし、直射日光、空調吹出口、外壁、発熱機器の近くは避けます。
冷蔵庫・冷凍庫
外部プローブ型のサーミスタまたはPt100が候補になります。
ロガー本体を庫外に置き、プローブだけを庫内へ設置すれば、画面確認、通信、電池交換を行いやすくなります。扉パッキンへケーブルを無理に挟まず、専用ポートや適切な配線方法を検討してください。
研究・品質管理
安定性、再現性、校正を重視する場合はPt100が有力です。
必要な精度に応じて、配線方式、校正点、測定器本体の精度、センサーとロガーを組み合わせた総合精度を確認します。
配管・機械設備
対象物への熱的な密着、取り付け方法、振動、ケーブル保護が重要です。
中温域で安定性を重視する場合はPt100、広い温度範囲や応答性を重視する場合は熱電対が候補になります。
炉内・高温設備
高温域へ対応する熱電対を基本に検討します。
熱電対の種類だけでなく、保護管材質、雰囲気、常用限度、耐久性、補償導線まで含めて選定してください。
8.仕様表で確認したい項目
温度センサーを購入する前に、次の項目を確認します。
- 測定温度範囲
- 精度保証範囲
- 最大許容誤差
- 表示分解能
- 応答時間
- 長期安定性
- プローブの寸法と材質
- ケーブル長と耐熱温度
- 防水・防じん性能
- 対応する本体とインターフェース
- 記録間隔と保存容量
- 校正または精度確認の可否
「測定範囲」と「精度保証範囲」は同じとは限りません。また、0.01℃単位で表示できても、0.01℃の精度で測定できるとは限りません。
9.設置方法で生じる測定誤差
高性能なセンサーでも、設置方法が適切でなければ正しい測定値は得られません。
代表的な誤差要因は次のとおりです。
- プローブの挿入長が不足している
- 配管表面へ十分に密着していない
- ケーブルや保護管から熱が逃げる
- 直射日光を受けている
- ロガー本体の発熱を測っている
- 冷凍庫の吹出口や扉の直近に設置している
- センサー周辺に空気が滞留している
- 防水ではないコネクターへ結露水が流入する
空気温度、液体温度、表面温度は測定条件が異なります。何を測りたいのかを明確にしたうえで、プローブ形状と設置方法を選んでください。
10.UbiBotで温度を遠隔監視する場合
外部プローブを利用すると、ロガー本体を庫外に置いたまま庫内温度をクラウドで記録・監視できます。
UbiBotでは、測定環境に合わせて本体内蔵センサーと外部温度プローブを使い分けられます。
室内環境をまとめて監視する
UbiBot WS1 Proは、本体内蔵センサーによる温湿度などの記録に対応し、Wi-Fiまたはモデルによりモバイル通信を利用してクラウドへデータを送信できます。
オフィス、倉庫、サーバールームなど、空気温度を継続的に確認したい用途に適しています。UbiBot WS1 Pro公式製品情報
冷凍庫や設備内部を外部プローブで測る
UbiBotの工業用PT100温度センサーは、公式製品情報で測定範囲-200~400℃、プローブ部IP68、Modbus RTU通信、Micro USB接続のWS1 Pro対応モデルとして案内されています。UbiBot PT100温度センサー公式製品情報
本体を比較的安定した場所へ置き、外部プローブだけを冷凍庫、槽内、設備内部などへ配置できる点が特長です。
ただし、PT100プローブの測定範囲と、接続するロガー本体の使用環境は別に確認する必要があります。低温または高温の測定対象へ、ロガー本体まで入れられるとは限りません。
また、購入前には次の点を確認してください。
- プローブと本体の対応関係
- コネクターと通信方式
- 必要なケーブル長
- プローブ部と接続部の防水性能
- 設置場所の通信環境
- 必要な精度と校正条件
- アラート通知先と対応手順
UbiBotのクラウド監視は、温度履歴の可視化や異常通知に有効ですが、用途固有の法令、品質基準または人命安全用警報器を自動的に代替するものではありません。
11.購入前チェックリスト
- 測定対象が空気、液体、表面のどれか明確になっている
- 通常時と異常時の温度範囲をカバーしている
- 必要な精度と精度保証範囲を確認した
- 応答速度が用途に適している
- プローブの材質と寸法が設置場所に合っている
- ケーブルの耐熱性と長さを確認した
- 本体と外部プローブの互換性を確認した
- センサー部、コネクター、本体の保護性能を分けて確認した
- データ記録、CSV出力、アラート機能を確認した
- 必要な校正または定期的な精度確認を計画した
よくある質問
サーミスタとPt100はどちらが高精度ですか
一律には決められません。サーミスタは限定された温度範囲で高い感度を得やすく、Pt100は安定性と再現性を重視する測定に向いています。プローブ構造、測定回路、校正条件を含めて比較してください。
Pt100の「100」は何を意味しますか
0℃における公称抵抗値が100Ωであることを示します。Pt1000の場合は0℃で1,000Ωです。
熱電対は冷凍庫にも使えますか
対応温度範囲内であれば使用できます。ただし、冷凍庫の安定監視では、配線、ノイズ、冷接点補償、必要精度を考慮すると、Pt100やサーミスタの方が扱いやすい場合があります。
半導体温度センサーは精度が低いのですか
必ずしも低いわけではありません。環境温度監視に十分な精度を持つ製品もあります。測定範囲、ケース構造、本体発熱、通風、校正条件を確認することが重要です。
外部プローブを使うメリットは何ですか
測定部とロガー本体を分離できることです。冷凍庫や液体、設備内部にはプローブだけを配置し、本体を通信や点検に適した場所へ設置できます。
温度センサーは定期的な校正が必要ですか
必要性と周期は、用途、要求精度、使用環境、メーカー推奨、過去のドリフトによって異なります。品質管理や試験データに使用する場合は、定期的な精度確認または校正を計画してください。
まとめ
温度センサーは、方式ごとに温度を検出する原理と得意な用途が異なります。
サーミスタは高感度で小型化しやすく、Pt100は安定性と再現性、熱電対は広い温度範囲と高温対応、半導体センサーは小型・低消費電力・デジタル連携に特徴があります。
選定時は、センサー素子の種類だけでなく、プローブ構造、配線、測定回路、設置方法、記録機能、校正を一つの測定システムとして確認してください。
UbiBotでは、室内環境を監視する本体内蔵センサーと、冷凍庫や設備内部を測定する外部PT100プローブを用途に応じて選択できます。まず測定対象と必要温度範囲を整理し、対応機器、通信環境、アラート運用まで含めて構成を検討することが重要です。
参考資料
- 日本電気計測器工業会「熱電対」
- 日本電気計測器工業会「測温抵抗体」
- 日本産業標準調査会 JIS検索
- 村田製作所「NTCサーミスタとは?動作原理」
- チノー「温度センサガイド|熱電対・測温抵抗体の違いと選定ポイントFAQ」
- UbiBot WS1 Pro公式製品情報
- UbiBot PT100温度センサー公式製品情報
※製品仕様、対応機器、インターフェース、価格、在庫およびクラウド機能は変更される場合があります。公開または購入前に最新の製品仕様をご確認ください。