学術研究で使われたUbiBotセンサーを比較|WS1・WS1 Pro・GS1の採用事例と役割

UbiBot WS1、WS1 Pro、GS1は、いずれも環境データを記録・共有できるIoTセンサーですが、実際の学術研究では同じ役割で使われているわけではありません。

食品物流を想定した移動計測では小型のWS1、熱赤外線画像の校正では外部プローブを接続したWS1 Pro、建築物の長期・多点計測ではGS1が採用されています。

本記事では、原論文で確認できる3件の研究事例をもとに、各製品が「何を測り、研究全体のどの部分を支えたか」を比較します。製品の優劣を決めるランキングではなく、研究目的から機器構成を考えるためのガイドです。

重要:UbiBot製品が使われたことは、研究成果のすべてをUbiBot単体が生み出したことを意味しません。各研究では、GPS、熱赤外線カメラ、熱流センサー、解析ソフトウェアなどと組み合わせて使用されています。

食品物流、熱画像校正、建築環境計測で使われるUbiBotセンサーの比較

学術研究におけるWS1・WS1 Pro・GS1の活用イメージ

研究概要

製品 実際の研究事例 UbiBotで取得したデータ 研究内での役割
WS1 ケンブリッジ大学などによる自律型食品サプライチェーン研究 周囲温度、相対湿度、照度 GPSと組み合わせる物流環境データの準備
WS1 Pro シンガポール国立大学などによる都市熱赤外線研究 外部プローブによる接触式表面温度 熱画像から算出した表面温度の校正・検証
GS1-AL4G1RS 北京交通大学・ETH Zurichなどによる土壁・藁建築研究 室内外の温度、相対湿度 8か月の多点計測とEnergyPlusモデル校正

1.WS1:移動中の環境データを物流システムへ

2024年にComputers in Industryへ掲載されたOn implementing autonomous supply chains: A multi-agent system approachでは、ケンブリッジ大学とFetch.aiの研究チームが、自律型食品サプライチェーンのプロトタイプを構築しました。原論文(DOI)

研究チームはWS1とGPS記録用スマートフォンを自転車に搭載し、英国ケンブリッジ市内で温度・湿度・照度と位置情報を収集しました。取得データはCSVへ保存され、プロトタイプ上で配送中のリアルタイムデータのように再生されました。

この研究でWS1が担ったのは、サプライチェーンの自律制御ではなく、物流システムへ入力する現実的な環境データの取得です。また、実際の冷蔵車で食肉を運んだ試験ではなく、自転車による模擬的なデータ収集でした。

WS1は、次のような研究に向きます。

  • 小型・軽量な機器で環境データを収集したい
  • 温度、湿度、照度を一台で記録したい
  • CSVやクラウドデータを別の研究システムへ取り込みたい
  • 比較的小規模な実証から始めたい

現行の日本向けWS1は、2.4GHz Wi-Fi、内部記録、クラウド同期、CSV出力、外部温度プローブ接続に対応します。ただし、本体は防水仕様ではなく、移動体や屋外で利用する場合は筐体、電源、通信、結露対策が必要です。UbiBot WS1日本公式製品情報

自転車に温湿度・照度センサーとGPS端末を搭載した食品物流研究

WS1とGPSを組み合わせた移動環境データ収集のイメージ

2.WS1 Pro:外部プローブで熱画像校正を支援

2023年にScientific Dataへ掲載されたDistrict-scale surface temperatures generated from high-resolution longitudinal thermal infrared imagesでは、シンガポール国立大学、UC Berkeleyなどの研究チームが、2地点で計1,365,921枚の熱画像を収集しました。原論文(DOI)

主な観測機器はFLIR A300熱赤外線カメラです。WS1 Proは、校正位置B・Cの外部温度プローブから接触式表面温度を記録し、熱画像から求めた表面温度と比較するために使用されました。

つまり、WS1 Proが都市全体の熱画像を撮影したわけではありません。局所的な接触温度を提供し、リモートセンシング結果の妥当性を確かめる役割です。論文では、位置B・Cの校正解析に5分の時間分解能が使われていますが、UbiBotの生データ記録間隔そのものは明記されていません。

WS1 Proは、次のような構成を検討する場合に適しています。

  • 本体から離れた場所を外部プローブで測りたい
  • 表面、液体、冷凍庫内など測定対象に合うプローブを選びたい
  • 複数の外部センサーや有線インターフェースを利用したい
  • 現場データをクラウドと研究用データの双方で管理したい

ただし、プローブの測定範囲と本体の使用環境は別です。表面温度を測る場合も、固定方法、接触熱抵抗、日射、ケーブルからの熱移動が結果へ影響します。UbiBot WS1 Pro日本公式製品情報

WS1 Proの外部プローブと熱赤外線カメラで表面温度を比較する研究

接触式温度プローブによる熱赤外線画像校正のイメージ

3.GS1:長期・多点の建築環境計測

2026年にEnergy & Buildingsへ掲載されたBeyond Low-Carbon Buildings: implementation, hygrothermal performance, and LCA of poured earth and straw construction in rural Chinaでは、北京交通大学、ETH Zurichなどの研究チームが、中国甘粛省の実大住宅を評価しました。原論文(DOI)

研究ではGS1-AL4G1RSを室内7地点と屋外1地点に配置し、温度と相対湿度を5分間隔で8か月記録しました。データは季節ごとの温湿度変動、壁体の時間遅れや減衰の評価、EnergyPlusモデルの校正に利用されています。

一方、壁体の熱流は別の熱流センサーで測定され、ライフサイクルCO₂排出量も解析モデルで計算されました。GS1が熱流や炭素排出量を直接測ったわけではありません。

GS1シリーズは、次のような研究構成と親和性があります。

  • 複数地点を同じルールで長期間監視したい
  • 外部電源やモバイル通信を含む安定した運用を検討したい
  • 温湿度以外の外部センサーを組み合わせたい
  • 屋内外データをモデル校正や性能評価に使いたい

実際の対応センサー、通信方式、ポート構成はGS1のモデルによって異なります。研究論文と同じ型式が現在の国内標準構成と一致するとは限らないため、発注時は型番単位で確認してください。UbiBot GS1-A日本公式製品情報

土壁と藁を使った住宅の室内外でGS1温湿度センサーを長期運用する研究

GS1による建築物の長期・多点温湿度計測のイメージ

4.3製品の違いを研究設計から比較

比較視点 WS1 WS1 Pro GS1シリーズ
研究事例での主な使い方 移動する環境の簡易計測 外部プローブによる局所温度計測 長期・多点の定置計測
代表的な内蔵測定 温度・湿度・照度 温度・湿度・照度など 型式により温湿度など
外部センサー構成 比較的シンプル 複数ポートを利用しやすい 型式別に選択肢が多い
設置性 小型で仮設しやすい 本体と測定点を分離しやすい 定置・長期運用を組みやすい
電源・通信 Wi-Fi、電池/USB Wi-Fiまたはモデル別通信、外部電源等 Wi-Fi・携帯通信等、型式による
適した研究例 予備実験、教育、物流実証 校正、設備・表面温度、複合計測 建築、農業、倉庫などの長期観測

この表は研究事例と製品体系の違いを整理したもので、測定精度のランキングではありません。必要な精度、校正、設置環境、データ欠損対策によって最適な構成は変わります。

5.研究用センサー選定で確認したい5項目

測定対象

空気温度、表面温度、液体温度では適切なプローブと設置方法が異なります。目的変数と補助的な環境変数を分けてください。

時間分解能と時刻同期

必要なのは最短間隔とは限りません。対象現象の変化速度、他機器との同期、電池、通信量を考慮します。論文に記載された解析間隔と、機器の生データ取得間隔も区別します。

校正と不確かさ

研究では製品カタログの精度だけでなく、使用範囲における校正、センサー間差、設置後の比較確認が重要です。JEMIMAのJCSS資料は、計測のトレーサビリティや校正サービスを検討する際の参考になります。JEMIMA「JCSS校正サービスハンドブック」

欠測とデータ出力

通信停止中のローカル記録、復旧後の同期、CSV・API出力、タイムゾーン、機器IDを確認します。農研機構のUECSセンサーユニット資料でも、ローカル記録、時刻、異常値、通信不能時の扱いが設計項目として示されています。農研機構「UECS対応センサユニットA型作製マニュアル」

使用環境と保護

防水性は本体、感知部、コネクターで異なります。屋外、高湿度、結露、粉じん、農薬、振動がある場合は、保護による応答遅れも含めて検証します。

6.目的別の選び方

研究目的 構成の考え方
まず温湿度・照度データを集めたい 小型のWS1を候補にし、通信・保護条件を確認
表面や槽内を外部プローブで測りたい WS1 Proと目的に合うプローブの互換性を確認
複数室・複数棟を長期間測りたい GS1系を含め、電源・通信・保守を標準化
他の計測器とデータを統合したい CSV、API、時刻同期、機器IDを重視
論文で絶対値を比較したい 校正証明、測定不確かさ、設置方法を重視

研究事例と同じ製品を購入するだけでは、同じ結果は得られません。センサー位置、固定方法、校正、測定間隔、解析処理まで含めて研究計画を作る必要があります。

よくある質問

学術研究ではWS1、WS1 Pro、GS1のどれが最も高性能ですか

一律には決められません。小型性、外部プローブ、長期運用、通信方式など、研究目的に必要な機能で選びます。

論文にUbiBotが記載されていれば、研究成果はUbiBotで証明されたことになりますか

いいえ。センサーは研究装置の一部です。成果は研究設計、他の計測器、校正、解析方法を含む全体から得られます。

研究論文と同じ記録間隔を現行製品で再現できますか

必ずしも再現できません。論文執筆時の型式、ファームウェア、取得方法と現行仕様が異なる可能性があります。解析間隔と生データ間隔の違いにも注意してください。

クラウドデータだけで論文用の記録として十分ですか

研究要件によります。CSVなどの元データ、時刻、欠測、校正履歴、データ処理手順を保存し、再現可能性を確保する必要があります。

屋外研究でそのまま使用できますか

製品と型式によります。少なくとも防水・防じん、結露、日射、電源、電波、固定、盗難対策を確認し、必要に応じて保護筐体と外部プローブを使用してください。

まとめ

実際の学術研究では、WS1、WS1 Pro、GS1が異なる役割で採用されています。

  • WS1:物流システムへ取り込む温湿度・照度データの収集
  • WS1 Pro:外部温度プローブによる熱画像校正用データの取得
  • GS1:建築物における8か月の多点温湿度記録とモデル校正

共通する価値は、時刻付きの環境データを蓄積し、CSVやクラウドを通じて解析へつなげられることです。一方、製品単体が研究成果を証明したり、他の専門計測器をすべて代替したりするわけではありません。

導入前に、測定対象、必要精度、外部センサー、記録間隔、通信、校正、設置保護を整理すると、研究目的に合うUbiBot構成を選びやすくなります。

参考資料

  1. Xu, L. et al., “On implementing autonomous supply chains: A multi-agent system approach,” Computers in Industry, 2024
  2. Lin, S. et al., “District-scale surface temperatures generated from high-resolution longitudinal thermal infrared images,” Scientific Data, 2023
  3. Li, J. et al., “Beyond Low-Carbon Buildings: implementation, hygrothermal performance, and LCA of poured earth and straw construction in rural China,” Energy & Buildings, 2026
  4. UbiBot WS1日本公式製品情報
  5. UbiBot WS1 Pro日本公式製品情報
  6. UbiBot GS1-A日本公式製品情報
  7. JEMIMA「JCSS校正サービスハンドブック」
  8. 農研機構「UECS対応センサユニットA型作製マニュアル」

※研究で使用された型式と、現在日本で販売されている型式・仕様が異なる場合があります。公開または購入前に、原論文と日本公式サイトの最新仕様を確認してください。

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