サーバールームの温度は、空調機の設定値だけでは判断できません。ラックの吸気側と排気側、上段と下段、空調機からの距離、機器の実装密度によって局所的な温度差が生じるためです。
安定した監視には、代表性のある測定点、異常を見逃さない記録間隔、夜間・休日にも届く通知、通信障害時の記録、漏水や停電を含む対応手順が必要です。本記事では、センサーの設置方法と、日本市場で選べる温湿度監視システムを簡潔に比較します。
サーバールームの温度・湿度をクラウドで常時監視し、異常を早期に把握するイメージ
要点
- 室内中央の1台だけでなく、重要ラックの吸気側を監視する
- ラック上段・中段・下段の温度差を導入時に確認する
- 空調吹出口の直下や排気熱が直接当たる場所を代表点にしない
- 高温だけでなく、高湿度・低湿度、オフライン、電池残量も通知する
- 通信停止中もデータを保持できる機器を選ぶ
- 空調配管や床下がある場合は漏水監視も検討する
- 製品価格だけでなく、親機、クラウド、保守、校正を含む総構成で比較する
JEITAのデータセンター向け資料では、IT機器の安定稼働と空調省エネルギーを両立するため、温度・湿度などの環境条件を把握し、施設と機器に応じて管理する考え方が示されています。すべてのサーバールームに一律の設定値を当てはめるのではなく、使用機器の仕様と運用方針に基づいて管理値を決めることが重要です。 JEITA「日本の省エネ型データセンターにおけるIT機器の環境条件ガイドライン」
1.サーバールームで監視したい項目
基本となるのは温度と相対湿度です。設備構成とリスクに応じて、次の項目も組み合わせます。
| 監視項目 | 確認できるリスク |
|---|---|
| 温度 | 空調停止、局所的なホットスポット、ラック過密 |
| 湿度 | 結露リスク、乾燥時の静電気リスク |
| 漏水 | 空調ドレン、冷却配管、天井・床下からの水漏れ |
| 電源状態 | 停電、監視装置やネットワーク機器の電源断 |
| 機器オフライン | 通信障害、電池切れ、センサー停止 |
| 扉の開閉 | 入退室や扉の閉め忘れによる環境変化 |
温湿度センサーだけを設置しても、停電時にルーターとアクセスポイントが停止すれば、クラウド通知は送れません。センサー、ネットワーク機器、通知経路、UPS、現場対応を一つのシステムとして設計します。
2.温湿度センサーの設置位置
ラックの吸気側を優先する
サーバーが実際に取り込む空気を把握するには、ラック前面の吸気側が重要です。導入時は上段・中段・下段で温度を比較し、差が大きい場合は常設点を増やします。
代表測定点として避けたい場所は次のとおりです。
- 空調吹出口の直下
- サーバー排気が直接当たるラック背面
- 出入口のすぐ近く
- 外壁や窓に密着した場所
- UPSや電源装置の発熱を局所的に受ける場所
ラック背面の排気温度も設備診断には有用ですが、吸気環境を代表する値とは分けて管理します。クラウド上の名称も「ラックA・前面上段」のように、場所と役割が分かる形式にします。
重要ラックの吸気側では、上段・中段・下段の温度差を確認して測定点を決めます。
最初は仮設ロガーで温度分布を確認する
常設台数を床面積だけで決めるのは適切ではありません。ラック列、発熱密度、空調方式、床下送風、通路の分離、将来の増設を確認し、仮設ロガーで昼夜や負荷変動を測定してから配置を決めます。
仮設ロガーで気流と温度分布を調査すると、局所的なホットスポットを見つけやすくなります。
3.異常通知の設定方法
アラート値は、サーバー・ストレージ・ネットワーク機器の許容条件と施設の運用基準に基づいて設定します。インターネット上の一般値をそのまま採用せず、通常時の実測値と設備停止時の温度上昇速度も確認してください。
設定しておきたい通知は次のとおりです。
- 高温・低温
- 高湿度・低湿度
- 一定時間以上のしきい値逸脱
- 機器オフライン
- 電池残量低下
- 漏水検知
- 必要に応じて停電・扉開放
瞬間的な変動で通知が多発する場合は、継続時間やヒステリシスを設定します。ただし遅延を長くしすぎると、空調停止への対応が遅れます。一次対応者、夜間連絡先、確認項目、エスカレーション条件まで手順書に含めます。
高温・高湿度・機器オフラインなどの異常を、担当者へ速やかに通知します。
4.日本市場で選べる温湿度監視システムの比較
以下はランキングではありません。クラウド直結型、国内無線ロガー型、PC集中監視型という異なる構成を比較しています。
| 比較項目 | UbiBot WS1 | T&D RTR507B+RTR500BW | チノー MD8000温湿度モデル |
|---|---|---|---|
| 基本構成 | Wi-Fi温湿度センサー+クラウド | 無線温湿度ロガー+ネットワーク親機 | 無線送信器+USB受信器+PC |
| 温湿度測定 | 温度・湿度・照度、外部温度プローブ対応 | 高精度温湿度センサー | 温湿度モデルを選択 |
| センサー側記録 | 最大300,000件 | 8,000件×2チャンネル | 16,000件/チャンネル |
| 遠隔確認 | Web、アプリ、クラウド、API | おんどとり Web Storageなど | PC用アプリケーション中心 |
| 上位通信 | 2.4GHz Wi-Fi | 親機から無線LAN・有線LAN | USB接続PC |
| 拡張の考え方 | WS1を追加。LD1などを同一プラットフォームで管理 | RTR500Bシリーズの子機・中継機を追加 | 多様な入力モデルをPCで集中管理 |
| 向いている導入 | 小~中規模、クラウド確認、短期間で導入したい場合 | 国内ロガー体系、高精度測定、親機を使った多点収集 | PC常設、接点警報、多入力の集中監視 |
| 購入前の確認 | 2.4GHz Wi-Fi、WPA2-Enterprise非対応、給電・電池条件 | 親機の要否、電波調査、センサー部の防水性 | PC常時運転、モデル、受信範囲、保守方法 |
空調ドレンや床下配管がある場合は、温湿度監視と漏水検知を組み合わせます。
UbiBot WS1
UbiBot WS1は、Wi-Fiへ直接接続し、温度・湿度・照度をクラウドで確認できる小型センサーです。日本公式ページでは、温度-20~60℃、湿度10~90%RH、最大300,000件の内部記録、アプリ・メールなどの通知に対応すると案内されています。ネットワーク障害中も本体で記録を継続できるため、既存の2.4GHz Wi-Fiを利用して小規模なサーバールームを早く監視したい場合に適しています。 UbiBot WS1公式製品情報
空調配管や床下の漏水リスクも監視したい場合は、UbiBot LD1を同じIoTプラットフォームで管理できます。LD1にはWi-Fi、4G、イーサネット対応モデルがあり、検知ケーブルとクラウド通知を組み合わせられます。 UbiBot LD1公式製品情報
一方、WS1は5GHz Wi-FiとWPA2-Enterpriseに対応していません。企業ネットワークへ接続できるか、購入前に情報システム部門と確認してください。
T&D RTR507B+RTR500BW
T&D RTR507Bは、温度-25~70℃、湿度0~99%RH、代表精度±0.3℃・±2.5%RH、8,000件×2チャンネルの記録容量を持つワイヤレスロガーです。遠隔監視にはRTR500BWなどの親機を組み合わせます。国内で広く展開されるロガー体系、交換可能な温湿度センサー、校正サービスを重視する場合に検討しやすい構成です。 T&D RTR507B公式製品情報/RTR500BW公式仕様
チノー MD8000
チノーMD8000は、温湿度のほか、熱電対、測温抵抗体、電圧入力などの送信器を選択できる無線ロガーです。USB受信器とPCを中心に構成し、接点警報やEメール通知、多種類の入力をまとめて管理したい設備に適しています。 チノー MD8000公式製品情報
5.UbiBotが適しているサーバールーム
UbiBot WS1は、次の条件と相性があります。
- 既存の2.4GHz Wi-Fiを利用できる
- 1室または少数拠点から導入したい
- PCを常時設置せず、スマートフォンで確認したい
- 温湿度の履歴と異常通知を早く運用開始したい
- 将来、漏水監視や複数拠点管理へ拡張したい
- CSV出力やAPI連携を利用したい
一方、厳格なネットワーク認証が必要な施設、大規模な特定小電力無線網、PCを中心とした接点制御が必要な設備では、T&Dやチノーを含めて構成を比較するのが適切です。
6.導入規模別の構成例
| 規模 | 構成例 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 小規模サーバールーム | WS1を重要ラック前面と室内代表点に設置 | Wi-Fi、USB給電、通知先 |
| ラック数が多い部屋 | ラック列・高さごとに複数のWS1 | 温度分布、命名規則、通信状態 |
| 漏水リスクがある設備 | WS1+LD1 | 空調ドレン、床下、検知ケーブル経路 |
| 複数拠点 | 拠点ごとのWS1/必要に応じLD1+クラウド一元管理 | 権限、拠点名、エスカレーション、API |
7.導入前チェックリスト
- サーバー機器の許容温湿度条件を確認した
- ラック吸気側の上段・中段・下段を仮測定した
- 空調吹出口と排気側だけを代表点にしていない
- 2.4GHz Wi-Fiと認証方式を確認した
- センサー、ルーター、アクセスポイントの停電対策を確認した
- オフラインと電池残量低下の通知を設定した
- 夜間・休日の対応者を決めた
- 漏水監視の必要性を確認した
- 通信遮断後のデータ補完を試験した
- クラウド料金、保存期間、CSV・API条件を確認した
よくある質問
サーバールームのセンサーは何台必要ですか
床面積だけでは決められません。ラック列、実装密度、空調方式、上下の温度差に基づいて決定します。最初に仮設センサーで温度分布を確認する方法が有効です。
センサーはラックの前と後ろのどちらに置きますか
サーバーが取り込む空気を監視する目的では前面の吸気側を優先します。背面の排気側は、排熱や空調効率を調べる診断点として分けて管理します。
Wi-Fiが切れた場合、データは失われますか
ローカル記録対応機器であれば通信停止中も測定を継続できます。復旧後に元の測定時刻でクラウドへ補完されるか、導入時に実機で試験してください。
温度だけを監視すれば十分ですか
温度に加えて湿度、機器オフライン、電池残量を監視すると異常を判断しやすくなります。空調配管や床下がある施設では漏水監視も検討してください。
通信障害中もセンサー側で記録を続け、復旧後に測定データを補完できる構成が有効です。
まとめ
サーバールームの温湿度監視では、室内中央の数値だけでなく、重要ラックの吸気側と高さ方向の温度差を把握することが重要です。通知機能だけでなく、通信障害時の記録、停電対策、漏水、夜間対応まで含めて設計してください。
UbiBot WS1は、既存の2.4GHz Wi-Fiを利用し、温湿度のクラウド監視と異常通知を短期間で始めたい小~中規模のサーバールームに適した選択肢です。漏水検知器LD1を組み合わせれば、同じプラットフォーム上で環境リスクをまとめて確認できます。
国内ロガー体系や校正を重視する場合はT&D、PCを中心に多入力・接点警報を構成する場合はチノーも有力です。設置環境、ネットワーク、必要な通知、保守体制を整理してから選定してください。
参考資料
- JEITA「日本の省エネ型データセンターにおけるIT機器の環境条件ガイドライン」
- 資源エネルギー庁「データセンター業に係る措置のガイドライン」
- UbiBot WS1公式製品情報
- UbiBotサーバールームソリューション
- UbiBot LD1公式製品情報
- T&D RTR507B公式製品情報
- T&D RTR500BW公式仕様
- チノー MD8000公式製品情報
※製品仕様、価格、クラウド機能、契約条件は変更される場合があります。購入前に各メーカーの最新情報をご確認ください。