温度ロガーの校正証明書とは?JCSS・トレーサビリティ・精度確認を解説

温度ロガーを選ぶ際、「精度±0.3℃」などの製品仕様だけを確認していないでしょうか。

医薬品、食品、研究試料、冷蔵・冷凍品などの温度管理では、カタログ精度に加えて、その機器が実際にどの程度正しく測定できているかを証明できることが重要です。そのために利用されるのが、校正証明書、試験成績書、トレーサビリティ体系図などの校正関連書類です。

ただし、工場出荷時の検査、メーカーによるセンサー補正、第三者機関の校正、JCSS校正は同じものではありません。

本記事では、温度ロガー導入前に知っておきたい校正の基礎と、校正証明書を確認する際のポイントを解説します。

温度校正槽と基準温度計を使用して温度ロガーを校正する様子

温度ロガーの校正では、基準器との比較結果や校正条件を記録し、測定値の信頼性を確認します。

要点

温度ロガーの校正では、次の点を確認します。

  • 校正と調整は異なる
  • 校正証明書の有無だけでなく、校正点を見る
  • 実際に使用する温度帯で校正する
  • 本体、内蔵センサー、外部プローブのどこが校正対象か確認する
  • JCSS校正が必要かは、法令、取引条件、品質管理方針に基づいて判断する
  • ソフトウェアによる補正値設定は、校正証明書の代わりにはならない
  • 校正周期は一律ではなく、使用環境と要求精度から決める

1.温度ロガーの「校正」とは

校正とは、測定器が示す値と、基準となる標準器が示す値との関係を確認する作業です。

例えば、標準器が5.00℃を示している環境で温度ロガーが5.35℃を示した場合、両者の差を校正結果として記録します。

T&Dの説明では、校正はトレーサビリティの取れた標準器を使用し、測定器が示す値と標準器との差を証明する作業とされています。また、校正そのものには、測定器を調整して誤差を修正する作業は含まれないと説明されています。T&D「校正について」

つまり、校正を受けたからといって、測定値が自動的に正しく調整されるとは限りません。

2.校正・調整・精度確認の違い

混同しやすい用語を整理すると、次のようになります。

用語 主な目的 結果
校正 標準器と測定器の示す値の関係を確認する 測定誤差や不確かさを記録する
調整 測定値を基準値へ近づける 機器内部またはソフトウェアの補正値を変更する
精度確認 使用上の許容範囲に入っているか確認する 合格・不合格などを判断する
検査 製品や工程が定めた条件を満たすか確認する 検査記録や判定結果を残す
温度ロガーの校正・調整・精度確認の違いを示した図

校正は基準器との差を明らかにする作業、調整は表示値を修正する作業、精度確認は定めた許容範囲内にあるかを判定する作業です。

現場で基準計器と並べて値を比較する作業は、異常を発見するための精度確認として有効です。しかし、その比較だけで国家標準へのトレーサビリティが証明されるわけではありません。

3.校正証明書には何が記載されるのか

校正証明書を受け取ったら、書類名だけでなく内容を確認します。

主な確認項目は次のとおりです。

  • 校正対象の機器名
  • 型式と製造番号
  • 校正日
  • 校正を実施した温度
  • 標準器の指示値
  • 温度ロガーの指示値
  • 両者の差
  • 測定不確かさ
  • 校正環境
  • 使用した標準器
  • 校正機関
  • トレーサビリティに関する情報

特に重要なのは、実際に使用する機器と校正証明書の製造番号が一致していることです。

複数台の温度ロガーを使用する場合、証明書がどの機器に対応するのか分からなくならないよう、機器ID、設置場所、校正期限を管理します。

4.JCSS校正とは

JCSSは「計量法校正事業者登録制度」の略称で、計量法に基づく日本の校正事業者登録制度です。制度は独立行政法人製品評価技術基盤機構の認定センターであるIAJapanが運営しています。NITE「計量法校正事業者登録制度(JCSS)」

登録事業者が認定範囲内で実施した校正では、JCSS標章付き校正証明書が発行されます。

JCSS標章付き証明書は、校正結果が日本の国家計量標準へつながっていることを示す手段の一つです。ただし、登録事業者であれば、すべての機器と温度範囲についてJCSS校正ができるわけではありません。

依頼前に次の点を確認してください。

  • 対象機器が認定範囲に含まれるか
  • 必要な温度範囲に対応しているか
  • 本体だけか、センサーを含むシステム全体か
  • JCSS標章付き証明書が発行されるか
  • 通常校正とJCSS校正のどちらで受け付けられるか

チノーでは、JCSS校正と独自校正を区別して案内しており、校正対象や試験項目がJCSSの認定範囲外の場合は独自校正になるケースがあると説明しています。チノー「JCSS校正試験」

温度ロガーから国家計量標準までのトレーサビリティ体系

測定のトレーサビリティは、使用中の温度ロガーから基準器、校正機関、国家計量標準へと切れ目なくつながる比較の連鎖によって確保されます。

5.トレーサビリティとは

計量トレーサビリティとは、切れ目のない校正の連鎖によって、測定結果を国家標準または国際標準へ関連付けられる状態を指します。

重要なのは、単に「精度の高い温度計と比較した」ということではありません。比較に使用した標準器が、さらに上位の標準器によって校正され、その経路が文書で確認できる必要があります。

一般的な校正サービスでは、次の書類が組み合わされる場合があります。

  • 校正証明書
  • 試験成績書
  • トレーサビリティ体系図

ただし、これらの書類が付属していても、自動的にJCSS校正になるわけではありません。JCSSが必要な場合は、証明書の標章と校正機関の認定範囲を確認してください。

6.測定精度と測定不確かさの違い

製品仕様に記載される「精度」と、校正証明書に記載される「測定不確かさ」は同じ意味ではありません。

製品の測定精度

メーカーが定めた条件下で、測定値がどの程度の誤差範囲に入るかを示す仕様です。

測定不確かさ

校正結果にどの程度のばらつきがあり得るかを、校正方法、標準器、環境条件、繰り返し測定などを含めて評価した値です。

例えば、管理上限が8.0℃で、温度ロガーが7.8℃を示していても、測定誤差や不確かさを考慮すると、実際の温度が管理上限を超えている可能性があります。

要求精度の厳しい用途では、表示値だけでなく、校正結果と測定不確かさを含めて判定基準を決める必要があります。

7.校正点は使用温度に合わせて決める

広い測定範囲を持つ温度ロガーでも、すべての温度で同じ精度が得られるとは限りません。

校正点は、実際の管理温度と判断基準に合わせて選びます。

使用例 校正点の考え方
医薬品冷蔵庫 管理範囲の下限付近・中央付近・上限付近
冷凍庫 通常の運転温度と警報判定に重要な温度
食品保管庫 保管基準と現場の管理温度に近い点
温室・倉庫 季節変動と高温・低温アラート値を考慮
研究・試験 試験条件と判定温度に合わせて設定

例えば2~8℃を管理する冷蔵庫であれば、25℃だけの校正よりも、実際の使用範囲に近い温度点での校正が有用です。

必要な校正点数を増やすと費用も増えるため、法令、顧客要求、リスク評価および社内手順に基づいて決めます。

8.外部プローブはどこまで校正されるのか

外部温度プローブを使用する場合、校正対象の範囲に注意が必要です。

考えられる校正方法には次のような違いがあります。

  1. ロガー本体の入力回路だけを校正する
  2. 外部プローブだけを校正する
  3. ロガー本体と外部プローブを組み合わせて校正する
  4. プローブ、延長ケーブル、保護管などを含む使用状態で校正する

JQAの温度記録計・温度指示計器向けサービスには、センサーを含まない電気的校正もあります。このことからも、「温度ロガーを校正した」という表現だけでは、感知部まで校正されているか判断できません。日本品質保証機構「温度記録計・温度指示計器の校正」

購入前には、次のように具体的に確認することが重要です。

実際に使用するロガー本体、外部プローブ、ケーブルを組み合わせた状態で校正できますか。

外部プローブを交換した場合は、以前の校正証明書をそのまま適用できるかも確認してください。

低温・常温・高温における温度ロガーの校正点と外部プローブ

校正点は実際の使用温度域に合わせて設定し、本体・ケーブル・コネクター・外部プローブを含む校正対象範囲を事前に確認します。

9.校正周期はどのように決めるのか

すべての温度ロガーに共通する校正周期はありません。

校正周期は次の条件から決めます。

  • メーカーの推奨
  • 使用目的と要求精度
  • 使用温度と湿度
  • 結露、粉じん、薬品などの影響
  • センサーの経年変化
  • 過去の校正結果
  • 顧客または監査上の要求
  • 機器の落下、修理、プローブ交換
  • 測定値に不自然な変化があった場合

一般的には一定の周期を設定し、過去の校正結果が安定していれば見直しを検討します。反対に、許容範囲に近づく傾向がある場合は、校正間隔を短くします。

「毎年校正すれば必ず十分」というわけではなく、リスクと実績に基づく管理が必要です。

10.UbiBot製品で確認したい校正上のポイント

UbiBotの温湿度ロガーは、温湿度の連続記録、クラウドでの遠隔確認、アラート、データ出力などを組み合わせられる点が特長です。

日本公式サイトの温度校正に関する説明では、搭載されているSHT30温湿度センサーは、センサーチップメーカーによって校正、線形化および補正済みとされています。また、UbiBotプラットフォームには、測定チャンネルへ補正値を設定する機能があります。UbiBot「温度校正」

ただし、次の3点は区別して考える必要があります。

  • センサーチップメーカーによる工場校正
  • UbiBotプラットフォーム上の補正値設定
  • 第三者校正機関が発行する校正証明書

プラットフォームで表示値を補正できても、それだけでJCSS校正証明書や第三者校正証明書が発行されるわけではありません。

正式な校正書類が必要な用途では、購入前に次の項目を確認してください。

  • 使用するUbiBot本体の型式
  • 内蔵センサーと外部プローブのどちらを使用するか
  • 校正対象を本体、プローブ、または組み合わせのどこまでとするか
  • 希望する校正温度
  • 国内校正機関が対象機器を受け付けられるか
  • 校正後の補正値をクラウドへ反映する手順
  • 次回校正までの機器管理方法

UbiBotは、遠隔監視や複数拠点の一元管理を重視する場合に検討しやすい製品です。一方、校正証明書を品質管理に使用する場合は、必要な校正方式を先に決めてから機器とプローブの構成を選ぶことが重要です。

11.日本市場で確認できる校正対応の違い

以下は製品や校正サービスの優劣を示すランキングではありません。公開情報から確認できる校正対応の違いを整理したものです。

提供元 公開されている主な対応 導入前に確認したい点
UbiBot センサーチップの工場校正、クラウド上の補正値設定 第三者校正の受付可否、校正対象、校正点、証明書の種類
T&D 温度・湿度の校正受付、校正証明書・試験成績書・トレーサビリティ体系図 対象機種、校正範囲、校正点、JCSS校正が必要か
チノー 認定範囲内のJCSS校正と独自校正サービス 対象機器と温度範囲がJCSS認定範囲に含まれるか
JQA 温度記録計、温度指示計器などのJCSS対応校正 センサーを含む校正か、電気的校正のみか

T&Dでは、温度・湿度の校正サービスについて、校正証明書、試験成績書、トレーサビリティ体系図を含む構成が公開されています。一方、対象機種や校正方法によって条件が異なるため、JCSS標章付き証明書が必要な場合は別途確認が必要です。T&D「校正について」

チノーは、温度センサーや指示計付き温度計、湿度計などについて、認定範囲内でJCSS校正を提供しています。チノー「JCSS校正試験」

最終的な選定では、校正サービスの有無だけでなく、遠隔監視、記録容量、アラート、通信、データ出力、保守費用を含めて比較してください。

12.購入前チェックリスト

校正要件

  • JCSS校正が必要か確認した
  • 一般校正でも要求を満たすか確認した
  • 必要な校正点を決めた
  • 許容誤差を決めた
  • 測定不確かさの扱いを決めた

機器構成

  • 本体と外部プローブのどちらが校正対象か確認した
  • 本体とプローブを組み合わせて校正できる
  • 製造番号を証明書と対応付けられる
  • プローブ交換時の再校正条件を確認した

運用

  • 校正周期を決めた
  • 校正期限を管理できる
  • 校正期間中の代替機を準備した
  • 校正前後のデータの扱いを決めた
  • 補正値の変更履歴を残せる

よくある質問

校正証明書があれば測定値は必ず正確ですか

校正証明書は、校正を実施した時点と条件における測定結果を示すものです。その後の落下、劣化、結露、プローブ交換などによって状態が変化する可能性があるため、日常点検と定期的な再校正が必要です。

JCSS校正はすべての温度管理で必要ですか

必ずしも必要ではありません。法令、顧客要求、品質管理基準、監査条件によって必要性が異なります。一般校正で十分な場合もあるため、要求仕様を先に明確にしてください。

メーカーの精度仕様と校正証明書は何が違いますか

メーカー仕様は製品型式に対する一般的な性能です。校正証明書は、特定の製造番号を持つ機器を、特定の条件と温度点で確認した結果です。

ソフトウェアで補正すれば校正は不要ですか

補正値を設定するには、基準となる校正結果または信頼できる比較結果が必要です。ソフトウェア補正だけでは、国家標準へのトレーサビリティや第三者による校正実施を証明できません。

外部プローブを交換したら再校正が必要ですか

プローブが測定精度に影響するため、原則として再確認が必要です。以前の証明書を適用できるかは、証明書の対象範囲、プローブの互換性および品質管理手順に基づいて判断してください。

まとめ

温度ロガーの校正では、校正証明書の有無だけでなく、校正対象、校正点、測定不確かさ、トレーサビリティおよび証明書の種類を確認することが重要です。

JCSSは日本の計量法に基づく校正事業者登録制度ですが、すべての用途でJCSS校正が必要とは限りません。実際の要求は、法令、取引条件、品質管理方針およびリスク評価に基づいて決定します。

UbiBot製品は、温湿度データの連続記録、クラウドでの確認、アラート、複数拠点管理を組み合わせたい場合に適した選択肢です。正式な校正証明書が必要な場合は、使用する本体と外部プローブ、必要な校正点、国内校正機関での受付可否を購入前に確認してください。

製品の標称精度だけで判断せず、「どの機器を、どの温度で、どの方法により校正し、その結果をどのように運用へ反映するか」まで含めて温度監視システムを選定することが重要です。

参考資料

  1. 製品評価技術基盤機構「計量法校正事業者登録制度(JCSS)」
  2. 日本品質保証機構「温度記録計・温度指示計器の校正」
  3. T&D「校正について」
  4. チノー「JCSS校正試験」
  5. UbiBot「温度校正」

※校正範囲、対応機器、料金、納期および発行書類は変更される場合があります。依頼前に各メーカーまたは校正機関へ最新条件をご確認ください。

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